マグロの完全養殖に関して、もう1つ課題となっているのが餌の問題だ。沖出ししたマグロはここで約3年かけて長さ1.4m、体重80kgくらいになるまで育てられる。これまで主な餌はサバやウルメイワシ、アジ、アオリイカといった生魚だった。マグロを1kg太らせるのに必要な餌の量は15kg。サバも決して資源が豊富な魚ではない。漁業資源の減少が指摘されている魚が餌として大量投入されているため、マグロの養殖は資源保護の観点から問題がある上、コスト面で割高にならざるを得ない。

海上のいけす内で泳ぐまぐろ。餌は1日2回。写真は台風直後で水が濁っていて分かりにくいが、餌の時間になると海面に浮いてくる。この頃はまだ泳ぐスピードを上手にコントロールできずに網にぶつかって衝突死する個体も少なくない。死骸を放置するとサメがやってきて網を食いちぎるため、ダイバーが海底に潜って網の底を点検する。餌の食べ残しも掃除し、環境面にも配慮する。
海上のいけす内で泳ぐまぐろ。餌は1日2回。写真は台風直後で水が濁っていて分かりにくいが、餌の時間になると海面に浮いてくる。この頃はまだ泳ぐスピードを上手にコントロールできずに網にぶつかって衝突死する個体も少なくない。死骸を放置するとサメがやってきて網を食いちぎるため、ダイバーが海底に潜って網の底を点検する。餌の食べ残しも掃除し、環境面にも配慮する。

餌の生魚の比率をできるだけ抑える

 近畿大学ではこの問題を解決すべく、餌に使う生魚の量を抑えてなるべく魚粉をベースにして作られた配合飼料を多く取り入れようとしている。ただし、マグロの餌は成長スピードを左右するだけでなく、肉質、そして産卵期は卵質にまで影響する。配合飼料を成長段階のどのタイミングでどの程度与えるかは、まだ試行錯誤の段階だ。奄美実験場では、生魚で育てた場合と比較したデータを取りながら、できるだけ配合飼料でマグロを育てる研究が進められている

 「飼料会社による品質改良が進み、生魚の割合は減ってきている。だが生魚から配合飼料への変換を進めるために解決すべき課題はまだ多い」と、前述の高橋事業長は話す。

マグロには稚魚の段階から配合飼料を与える。いきなり与えても食べないため、小さい頃から少しずつ配合飼料に「慣らす」ことが重要だという
マグロには稚魚の段階から配合飼料を与える。いきなり与えても食べないため、小さい頃から少しずつ配合飼料に「慣らす」ことが重要だという

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