採卵した卵は水温にもよるが約1日で孵化する。稚魚は1カ月間、屋内の50トンサイズの水槽で育てられる。孵化したての稚魚は体長2~3mmで、生後2~3日後からワムシと呼ばれるプランクトンの一種を食べる。その後、生後12日前後たち、体長7mmになると、「孵化仔魚」と呼ばれる孵化したての魚を餌として食べるようになる。ここでは、同じ実験場内で育てたイシダイの孵化仔魚を与えているという。

歩留まりの悪さが課題

 この頃から稚魚は1日2~3mmずつ大きくなり、1カ月後には体長5~6cmまで育つ。もうすぐ海上の網いけすに移す「沖出し」のタイミングだ。採卵した卵から、海上の網いけすに出すまで育つ割合はわずか3%。これは、真鯛の70%、カンパチの30%など、他の魚に比べてかなり低い。最終的に出荷できる成魚まで育つのは全体の1%だという。

 この歩留まりの悪さがマグロ完全養殖のネックとなっている。稚魚の頃は共食いをしたり、少し大きくなるといけすに衝突して死んだりと、様々な要因があり、なかなか一筋縄ではいかないのが現状だ。「マグロは非常にデリケートな魚。音や光に敏感に反応する。ストレスが強いと死んでしまうこともある。」と、奄美実験場の高橋範行事業場長は話す。その生態はまだ分からないことも多く、歩留まりを高めるためにもマグロの生態のさらなる解明が求められている。

屋内の建物では、生後約1カ月までのマグロの稚魚が育てられる。それらの餌となるプランクトンや、孵化仔魚も同じ建物内で生産されている。
屋内の建物では、生後約1カ月までのマグロの稚魚が育てられる。それらの餌となるプランクトンや、孵化仔魚も同じ建物内で生産されている。
プランクトンの一種、ワムシ。クロレラと栄養強化剤を合わせて稚魚に与える。
プランクトンの一種、ワムシ。クロレラと栄養強化剤を合わせて稚魚に与える。
イシダイも育てられている。卵を産ませ、孵化直後のイシダイをマグロの餌として生後12日頃から与え始めている。
イシダイも育てられている。卵を産ませ、孵化直後のイシダイをマグロの餌として生後12日頃から与え始めている。
マグロの稚魚。体長5cmくらいのタイミングを見計らって沖のいけすに移す。
マグロの稚魚。体長5cmくらいのタイミングを見計らって沖のいけすに移す。

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