近大マグロは本州最南端、和歌山県串本町にある近大水産研究所の大島実験場で誕生した。近畿大学のマグロ研究の最先端技術がここに集結しており、大学内の一大拠点となっている。近大にはもう1つマグロの養殖拠点がある。鹿児島県の奄美大島に位置する奄美実験場だ。

温暖な気候がマグロを大きく育てる

 完全養殖のためには親マグロから卵を採る必要がある。ところが、大島実験場では水温が足りず卵がなかなかとれない時期が続いた。そこで、問題を解決するためにマグロの産卵に適した場所に拠点を設けることにした。それが奄美実験場の始まりだ。ここは年間を通じて水温が19度を下回らない。現在、奄美実験場は近大マグロの採卵拠点としては最も大きい。ここで採れた卵は空輸で大島実験場に運ばれ、育てられる。年にもよるが、大島と奄美、2つの拠点を合わせて年間80トン前後の完全養殖マグロが出荷されている。

 年間の平均水温は大島実験場が20度であるのに対し、奄美実験場は24度。温暖な気候は、採卵に適しているだけでなく、マグロの成長を早めてくれる。卵の孵化から成魚になるまでには最低3年かかるが、和歌山のマグロが3年で出荷に必要な40kgの大きさになるのに対し、奄美大島のマグロは80kgまで成長する。

(上・下) 奄美実験場は鹿児島県奄美大島南部の瀬戸内町に位置する。沖合には、直径20~30mの巨大な円形の網いけすが並んでいる。
(上・下) 奄美実験場は鹿児島県奄美大島南部の瀬戸内町に位置する。沖合には、直径20~30mの巨大な円形の網いけすが並んでいる。

 8月上旬、奄美実験場を訪れると採卵の真っ最中だった。マグロは夜に産卵することが多い。産卵に合わせて沖に設置された網いけすの中にいる親マグロが産んだ卵を、受精後、大きな口の開いた網を使ってすくい上げる。夜の作業が産卵期の終わりまで続く。重労働だが、ここで獲られた卵が完全養殖のスタートとなる。

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