自動車業界の成功体験がインダストリー4.0に引き継がれた

なぜ、ドイツの自動車メーカーはデジタル技術を駆使してモジュール化を進めようとしたのでしょうか。

長島:やはり、日本が強かったからだと思います。良い物を安く作る能力も、開発のスピードも、日本の方があったからです。現場の頑張りがあったからかもしれませんが、このままではトヨタ自動車などにやられてしまうという危機感があったのでしょう。

そうしたら、日本とは違う仕組みで挑むしかない。

長島:そうですね。その結果、モジュールによる組み合わせでモノ作りをしようという思想にどんどん傾いていったのでしょう。

その思想が、インダストリー4.0に引き継がれていると理解すべきだと。

長島:そう思います。欧州は規格の標準化が得意ですよね。インターフェースを一緒にしておけば、いろいろなものを共通化できる。つまり、個別に様々なものを開発する必要がなくなるので、その分の時間を他のことに使える。そういう感覚が、極めて強い。さらに言えば、標準化で欧州が先行すれば、グローバル展開で有利になるという考え方ですね。

 ただし、まだインダストリー4.0では、完全な標準規格があるわけではありません。必要最低限の標準規格の上にいろいろなアプリケーションを乗せながら、みんながトライ・アンド・エラーをしている状況だと思います。

インダストリー4.0という概念が発表されてから、大企業を中心に取り組みが進んできましたが、具体的には何が変わってきているのでしょうか。

長島:2014年ぐらいから、ドイツも変わり始めてきたと思います。それまでは、シーメンスなどが自社の取り組みとしてインダストリー4.0を実践していましたが、2014年ぐらいからそれを社外に売り始めました。ただ、まだソフトウエアやソリューションなどに柔軟性があまりなく、しかも高額だったので、あまり広がりませんでした。ところが、2016年ぐらいから、使った分だけ課金される従量課金制のクラウドベースのソリューションが登場するなどして、サービスがぐっと使いやすくなってきました。そして、企業が“多対多”で協業するようになってきたんです。

“多対多”とはどういうことですか。

長島:SAPやシーメンス、マイクロソフトといった様々な企業が、相互にサービスを接続するようなことが、2015年末ぐらいから起きてきました。そうなると、サービスを使う側の企業も、何となくこれを使っておけば間違いないよね、と言った感覚が広がってきました。そして今年は、こうしたソリューションを様々な企業が実装していく段階に入っていると思います。

 一方、中小企業については、これまではあまり進んでいなかったというのが実態でしょう。取り組み自体は一番ドイツが進んでいると思いますし、いろいろな産業クラスターで、政府や大学、民間企業が音頭を取って、中小企業に使ってもらうことを目標とした取り組みはたくさんあります。ようやく、徐々に成果が出はじめているという段階です。