ダイバーシティ重視が利益拡大に貢献

デジタル技術を活用した製品やサービス開発のためには、若い世代の登用が必要だと。

マクダーモット:その通りです。もちろん、世代のダイバーシティだけが唯一の方法ではありません。女性の登用も不可欠です。2017年中に最低でも全管理職の25%を女性にする目標を掲げています。ユニークなところでは、自閉症者の採用も積極的に進め、2020年までに全社員の1%(約650人)にする計画もあります。

 国籍だけでなく、世代や性別など多様なバックグラウンドの人を集め、組織に組み込んでいくことが、結果的に我々を成長させてくれるのです。

決して、CSR(企業の社会的な責任)という観点だけでダイバーシティを推進しているわけではないのですね。

マクダーモット:はい。ダイバーシティの推進は、我々のビジネスにしっかりと貢献しているし、利益にも貢献しています。従来、これらの関係はなかなか定量的に測定しにくかったのですが、SAPの財務チームが、2015年にとても興味深い取り組みをしてくれました。ダイバーシティや社員のエンゲージメント(社員の会社への愛着心)などの非財務的な指標が、財務指標である利益にどの程度影響を与えているかを分析してくれたのです。

どういうものですか。

マクダーモット:例えば、先の女性管理職比率を例に説明しましょう。

 女性管理職比率の上昇は、我々が社員の福利厚生や労働条件といった要素を分析した独自指標である「ビジネスヘルスカルチャー指数(BHCI)」にプラスの影響を与えます。そして、BHCIの数値が上昇すると、営業利益にプラスの影響を与えることを、人事データと財務データを解析して、定量的に示してくれました。

 具体的には、2016年12月期の女性管理職比率は24.5%と、前の期と比べて約1ポイント上昇しました。この結果などによって、BHCIは同時期、前期の75から78へと3ポイント上昇しました。

 BHCIのポイントが1ポイント上がると、営業利益に8000万~9000万ユーロ(約104億~117億円)プラスのインパクトを与えることが分かっています。つまり、2016年12月期は、女性活用などの効果で約330億円の利益増に貢献した計算になります。

 BHCIは、複数の要因によって変動するため、必ずしも女性管理職の増加だけが影響を与えたわけではありません。しかし、少なくとも、社外には女性登用の重要性を客観的に示すことができるようになったと考えています。

 このほかにも社員のエンゲージメントや、二酸化炭素排出量の削減などの非財務指標を設定し、それぞれを高めた場合に財務指標にどのような影響を与えるかを分析しています。

具体的には、どのように解析しているのですか。

マクダーモット:財務部門や人事部門がチームになって、社内の人事データと社員向けアンケートを、財務データと合わせて解析しました。現在は、社内向けの活用にとどまっているが、やがてノウハウが蓄積されれば、ぜひ社外向けにも提供していきたいですね。

 ただ、これらの指標は、あくまでもSAPがダイバーシティを推進した活動の結果です。指標の値を高めるために経営陣が力を入れるべき要素を明確にしているためで、これらの数値を高めること自体が目標ではありません。それでも、非財務指標がしっかりと財務指標に影響を与えていることを示すという点で、とてもユニークだと思っています。

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