ドイツが、産官学一体となって「Industrie 4.0(インダストリー4.0)」というコンセプトを初めて掲げてから、約6年の歳月が過ぎた。インターネットをはじめとするデジタル技術を最大限活用し、高付加価値の製品やサービスを生み出す産業構造に展開することを目指すというものだ――。日本語で「第4次産業革命」と訳されたこの言葉は、その後、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といったデジタル技術の進化と普及に伴って、より現実味を持って受け止められるようになっている。

 日経ビジネスオンラインは本日から、本誌特集(2017年8月21日号)との連動企画「ここまで来た!デジタル ドイツ アディダス、VW、シーメンスの変身」で、急速に進むドイツ企業のデジタル化の最前線をリポートしていく。ロンドン支局長の蛯谷敏が、最新事例を徹底取材した。そこから浮かび上がってきたのは、第4次産業革命が、工場における生産性の向上を目指す第1段階から、既存のビジネスモデルを変革して新事業を創造する第2段階へと急速に移行し始めているということだった。その象徴が、独スポーツ用品大手アディダスである。

3Dプリンターで“地産地消”へ

 アディダスは今年7月、ドイツ国内で「スピードファクトリー」を立ち上げた。今秋にもドイツで発売予定の「フューチャークラフト4D」というスポーツシューズを生産するためだ。その工場で使われるのは最新鋭の「3D プリンター」 。紫外線を当てると固まる特殊な液体樹脂を使ってソール(靴底)を生産。そのソールを、足の甲などを包み込むアッパー部分の部品と組み合わせる作業などにはロボットを活用し、大幅に省人化した。

アディダスが生産を始めた新シューズ「フューチャークラフト4D」。特殊樹脂を紫外線で固める3Dプリンターで、ソール(靴底)部分を“印刷”する。

 これによって、同社のサプライチェーンが大幅に短縮される。アディダスは、同社が販売する靴の9割以上をベトナムや中国などのアジアの工場で生産してきた。デザインを固めるまでに何度も試作品を作り、その生産をアジアで立ち上げ、完成した製品を消費地まで船などで輸送して販売する、というビジネスモデルだ。商品の企画から生産・販売までにかかっていた期間は1年半~2年程度だった。

 一方、スピードファクトリーでは靴をドイツ国内で生産する。コンピューターで作ったデザインをそのまま“印刷”できる3Dプリンターを活用するため、試作品の製作が迅速にできるようになったほか、ドイツ国内で生産するため、デザインしてから生産・販売にかかる期間は数週間、最短で数日で済むようになるという。

アディダスで技術イノベーションの責任者を務めるゲルト・マンツ氏(写真:永川智子)

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