自ら変わろうとしなければ変われない

MMCにはこれまでに複数の不祥事がありましたが、今回こそは変われるのでしょうか。

益子:たこつぼ文化のままでは、(風通しのいい組織に必要な)横串を通せず、牽制機能を効かせられません。先ほども言ったように、自分自身の問題はふたをしてしまいたくなるものなので、外部の力がどうしても必要になります。そこで日産にお願いしたのは、「開発部門の建て直しを支援していただけないか」ということでした。

 2004年の資金難の時は、三菱グループ3社(三菱重工業、三菱商事、三菱UFJフィナンシャル・グループ)が支援してくれました。でもこの3社は開発にまでは踏み込めませんでした。自動車会社としての経験がないからです。

 実は私からすると、「燃費問題があったから日産と提携した」わけではないんです。そのずっと前から我々経営陣の中にあったのは、「MMCはこれからも一人でやっていけるのか?」という疑問でした。

 自動車産業を取り巻く環境がどんどん厳しくなってきて、競争も激化しています。そんな中でMMCは、本当に将来に向けた技術力があるのか。自動運転やコネクティッド、AI(人工知能)をやらなければならないけれど、自分だけでやる力があるのかという問い掛けをする必要がありました。開発の現場からすれば、「自分たちでできる」ということだったのでしょうが、本当にできるのか。販売台数が100万台ちょっとの会社がそれらの新技術を開発して償却が本当にできるのか。どこかと提携する必要があるのではないか、と。

そういう意味では日産から開発の改革にやってきた山下光彦副社長の存在は大きいのでしょうか。

益子:山下さんは象徴的な存在ですが、改革は一人でできるものでもありません。実はゴーンさんに「人的支援をしてほしい」とお願いをした時にこんなことを言われました。「全面的に協力します。でも、経営は自分たちでやりなさい」と。

 人間は50歳や60歳になると性格をなかなか変えられないのと同じように、会社もなかなか変われない。自分たちで変えようとしないと、変わることなんてできません。だから、(日産から人的支援を受けるのとは別に、他の大手電機メーカーなどから)随分と人を採用しました。開発だけではなく全社的に。

 ずっとMMCにいた人たちからすると抵抗はあるでしょう。外部でキャリアを積んできた人とは文化が違いますから。でも、その文化の衝突、摩擦があるからこそ学ぶものもいっぱいある。それが今、大きな力になっていると思うんです。

効果が見え始めているということですか。

益子:はい、特に若い人たちに。タウンホールミーティングなど小規模の会議をいろいろとやり始めましたが、若手の反応が変わってきました。「自分たちが変わらないといけない、先頭に立って変えていかないと」という思いを持っている人も増えてきています。中途採用の人たちもこの会社に入って不安だったと思いますが、今では「やっていけそう」と言ってくれています。会社が変わってきているのを実感してくれているのでしょう。

 とはいえ社員には安心感ではなく危機感を持ってもらいたいと思っています。常に危機感を持って変わり続ける努力が大切です。