外的要因には強く、内的要因には弱い

この十数年間の利益の回復を示すグラフを手に

では、なぜ燃費不正の問題は起きてしまったのでしょうか。

益子:会社というのは面白いもので、問題の原因が自分の中にではなく外にある場合、ものすごい力を発揮します。

 私自身も実際に体験してみて分かったことですが、リーマンショックや東日本大震災、タイの洪水、円高……。この10年間で本当にたくさんの危機に直面してきましたが、いずれも一致団結して乗り越えることができました。タイの洪水では部品メーカーの協力もあって、ものすごい力を発揮してくれましたし、東日本大震災の時は「工場を止めるな」と私が言ったら、早期復旧して稼働させてくれました。これは部品メーカーの方々から本当に喜ばれました。「三菱が動いてくれたからキャッシュフローが回りました」と。こんな力が今のMMCには付いているんです。

 でも会社というものは、自分で自分の問題を解決するのはものすごく弱い。「今、自分が変わるために何をしたらいいか?」という内なる問い掛けに対しては、なかなか答えを見つけられないものなのです。

 今回の燃費不正問題は、外的要因ではありません。自分自身の問題です。そのため、「自分たちで変わろうよ」と強力なリーダーシップを発揮してくれる人が現場から何人も出てくる、なんてことにはならない。しかも燃費不正問題の場合、根本的な原因は20数年前にまでさかのぼらないと見えてきませんでした。だから非常に複雑で根深かったのです。

 社内調査で私自身、(燃費不正を起こした)何人もの社員にインタビューをしました。そこで「ああ、そうか」と思ったのは、ある社員にこう言われた時です。「益子さんは、先輩から『これ(燃費の測定方法)はこういうふうにやるんだぞ』と言われて、『それは本当に法規に適合したやり方ですか?間違ってないですか?』と指摘できますか?」と。

 確かに、先輩にこうするんだと教えられたら普通は聞き返しません。まさか先輩が法規に反したやり方を教えるなんて思わないですから。法規に反したやり方を最初に始めた人がいなければ、この問題は起きていなかったでしょう。当時の人はもう会社にいませんから、どうしてそんなことをしたのか聞くこともできませんでした。


「できないとは絶対に言うな」はまずかった

でも2005年、新人社員が「この測定方法は規則に反しているのではないか」との提言書を会社に出しました。自ら変わるチャンスでしたが……。

益子:その提言書は結局、社内に展開されることはなく狭いサークル内で話が終わってしまいました。非常に残念です。その時に出ていれば(会社を)変えられたし、少なくとも12年前には手を打てていたはずですから。

なぜ情報が経営トップまで上がってこなかったのでしょうか。

益子:事を荒立てたくない。今やっていることを否定したくない。事なかれ主義。こうした考え方を生んでいたのが、MMCの中で長い時間をかけて形成されてきた「たこつぼ文化」だったのではないかと思います。若い時から「上司には『できない』ではなく『答え』を持ってこい」と教育されてきたと聞いています。

 このこと自体は全面否定できません。部下が常に「できない」と言っていたら、何も進歩しませんから。ただ、「工夫して答えを探してみなさい」は分かるけど、「できないとは絶対に言うな」になってしまうのが良くなかった。

 今回の問題で、財政的な問題では見えなかった内なる問題点が浮き彫りにされました。その部分を今、相当の力を入れて改革しています。