「若年の献血者を確保するのが難しい中で、ゲームの力で若年層を中心に献血に協力してもらったことに驚いた」と日本赤十字社献血推進課の松田清功推進係長は、驚きを隠さない。イベントの実施にあたり、日赤が負担しているのは、イベントで配布するカードやその印刷費程度だ。告知に関しても、ユーザーによるSNSなどを使っての拡散が中心で、費用負担は抑えられる。
レッドファクションとのコラボレーションは、これまで一部の地域で限定して行っていたが、今年冬にも、全国で同時に実施する方向で検討が進められている。
誰かと協力するという仕組みがカギ
「レッドファクション」の特徴は、ゲームという従来にないきっかけで献血者を集めたという点だけではない。イベントを発案したのが日赤ではなく、イングレスユーザーであるという点だ。もともとマレーシアや香港で、イングレスのユーザーによる同様のイベントが行われ、それを知った日本のユーザーが自発的に日赤に提案して、実現したという経緯がある。
レッドファクションに参加している首都圏在住の男性ユーザーは、10年以上ぶりに献血に参加した。「イングレスは、1人だけで完結するゲームではなく、誰かと協力しながら陣地を広げてゲームを進めていくのが特徴なので、こうしたイベントとの親和性が高いと思う」と話す。
男性ユーザーに、レッドファクションに参加した意義について尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「『ゲームを通じて社会奉仕している』という意識はあまりありません。レッドファクションは自分に大きな負荷がなく、楽しみながら続けられる。そして別の人にいい形で拡散していけるところがいいと思う」
また、このユーザーは、1人でやるには踏ん切りがつかなかったり照れくささが伴うようなことでも、誰かとコミュニケーションしながらであれば具体的な行動につながりやすいという面白さにも気づいたという。
ユーザーがゲームを楽しむ気持ちが、結果として人を動かし、ビジネスや社会が抱える課題を解決していく。もはや、たかがゲームとは侮れない。レッドファクションの事例は、位置情報ゲームが潜在的に持つ大きな可能性を示しているといえそうだ。
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「献血ルームや献血バスをポータルとして登録」とあったのは
「献血ルームをポータルとして登録」
の誤りでした。お詫びして訂正いたします。
本文は既に修正済みです。 [2016/8/26 12:00]
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