外食チェーンの新しい価値を示した事例

 今回のポケモンGOとのコラボレーションは、どのように実現したのか。

 「ポケモンというコンテンツとは、子供向けのハッピーセットのおもちゃなどで、長年の付き合いがあった。こちらから強く提案したものでもなく、自然な会話の中で『こんなゲームがある』という話があり、議論を進めた」。唐澤部長はこう淡々と説明する。だが、今回のポケモンGOとのコラボレーションは、ファストフードの雄としてのブランドの存在感に加え、他業種との協業におけるプラットフォームとしての価値を新たに示したといえる。

日本マクドナルドの唐澤俊輔・ナショナルマーケティング部長(写真:陶山勉)
日本マクドナルドの唐澤俊輔・ナショナルマーケティング部長(写真:陶山勉)

 いちよし経済研究所の鮫島誠一郎主席研究員は「消費者の嗜好の変化や原材料高など外食チェーンの経営環境が変わったことで、多店舗展開によるメリットは以前よりも低下している。そんな中で、ゲームとのコラボレーションという外食店の新しい価値を示せたのは、マクドナルドが2900という店舗数を全国に持っているからこそといえる」と話す。

 マクドナルドは今、店舗の改装、店内の清掃や接客のオペレーションの変更などを通じてサービスの向上に努めている。今回のコラボは、これまで同社が取り組んでいることを顧客にアピールするうえで、ベストなタイミングだったともいえる。

 また、マーケティングの観点から言えば、ポケモンGOとのコラボは、新商品の発売などと違い店舗側の事前準備は特に必要ないにもかかわらず、集客効果を期待できる点も大きい。ただし唐澤部長は、「ゲームとのコラボで一時的に来客数が伸びても、店への投資を怠ったままであれば、その後のリピーターの増加にはつながらない」と話す。

 マクドナルドの業績は、仕入れ先による鶏肉の消費期限切れ問題が起きる前の2013年の水準には、まだ到達していないのが現状だ。マクドナルドが真に回復するには、今回の特需を持続的な成長につなげていくための地道な取り組みを、今後も続けていく必要がある。

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