乗車したときに、車内は東海道新幹線とあまり変わらない印象で、逆に時速300kmだと徐行しているように感じます。
寺井:そうですよね。
ここから先、快適性や、コスト効率の向上は、どう追求していくのでしょうか。
寺井:国土交通省に超電導リニアの技術を評価する委員会がありまして、その中で今後どうしていくべきか答申されているんですね。
快適性という点では、耳がツンとする問題が残っていると指摘されています。山梨実験線の標高差は、400mぐらいですけれども、中央新幹線ではもっと大きくなります。800mぐらいの標高差を一気に上り下りします。かなり条件は厳しいんです。耳がツンとする原因は、急激に気圧が変動するからで、高速エレベーターで昇ると耳がつんとしますよね。あれと同じ現象なんですね。それを何とかしなければ、というのが1つ大きな課題です。
解決のイメージは、換気装置が車内に付いているので、それをうまくコントロールして制御し、圧力の変化を人間が感じない程度までもっていければと考えています。より精緻にコントロールをするということですね。
無人運転のリニアを地上でコントロール
運行システムですが、無人で運転しますね。で、不安もあります。バックアップシステムはどうなっているのでしょうか。新幹線とは違うシステムを構築されたわけですよね。
寺井:そうですね。基本形は鉄道ですので、新幹線の安全システムは全部引き継いで設計してあります。運転手がいないのは、運行システムの中で運転をつかさどっているということです。運行システムが運転手と同じこと(役割)です。
この運行システムが新幹線でいうモーターを動かすシステムなんですけど、そこで「こういう電流を流しなさい」という指示をします。すると、送電線から受けた電気をガイドウェイ側のコイルに流すんです。
あと、運行システムとは別に、保安制御システムを備えています。その保安制御システムは何を見ているかというと、リニアの車両がどんなスピードで、どこの地点を走っているかを常に監視しているんですね。で、列車が(決められた)走行エリアを越えて出そうだと察知すると、ブレーキをかけにいきます。
思想としては新幹線のものを引き継いでいます。ただ、システムでコントロールするということが大きく違っていまして、これまでの新幹線ですと、一つひとつの車両に運転手さんが乗っていて、アクセルとかブレーキを操作して運転しているんですけれど、リニアはすべて地上からコントロールするので、そこに運転手がいるのと同じです。なので、全体の調和を取って、列車が詰まり過ぎないようにとか、何か異常があったらずっと後ろの方まで一斉にブレーキをかけてぶつからないようにする。だから、逆に回復するときは全体の調整をしながら、早い時間で元のダイヤに戻ることが容易になるんですね。そういうところは、今の新幹線にはできないメリットです。
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