談合後もやること変わらない

去年ゼネコン談合があった。ゼネコン幹部に聞くと、「JR東海は財投を借りたから、コストを抑えなきゃいけない」「建設需要が多い中で、リニア工事はあまり収益が上がらない」と話す。「だから談合する」という理屈は成り立たないと思いますが。

金子:成り立たないですね。我々は物を作るときには合理的で、できれば安くて、と当たり前の議論に戻っていく。注文を受ける側の論理として、「もっと高く」というのはあるかもしれないが、キリのない話で。事業者の中で一番きちんとした技術力があって、価格面でも折り合えるところに発注する自然な流れできているんですよね。

ゼネコン談合が起きて、公正契約等調査委員会を作ったが、結論はどうなったんですか。

金子:別に何ていうことはありません。何が起こったか、本当のところは分からない部分がありますよね。でも私たちは発注者側なので、契約について何か不正があったのではないかという疑いが生じた。なので、まず私たちの脇を締めましょう、と。これまでと基本的には同じ方式なんですが、ちゃんと規則を守るように誓約書をもらいました。それから、委員会の場でも契約に至るプロセスを説明してくださいよ、と。全社的にきちんと見るようなシステムにしましょうと。私たちの会社で発注者側としてきちんとやっていく責任がありますよね。

発注者責任というのをちゃんと果たして。

金子:やっぱりそこはしっかりやっていきましょうと。

じゃあ、かなり改善されたわけですね。

金子:改善というか、一緒です。

でも、きちんと技術陣がどうやっているか審査するのでは。

金子:いや、今までもきちんとやっているんです。今までも何かいい加減にやっていたわけじゃありません。法務の責任者なども入っている委員会もできて、誰もいい加減にやっていない、どこからもけちがつかないようにした。そういう公正性の、あるいは説明責任の担保です。

その委員会がきちんと担保するという形ですか。

金子:そうです。

7000万人の生活圏担う

リニアは20年後、JR東海、あるいは鉄道ネットワークの中でどういう存在になっているのでしょうか。東海道新幹線や在来線との役割などについて。

金子:リニアができますよね。リニアって東京~大阪が1時間ちょっとになりますよね。それと私たちが想定するのは、この6500万~7000万人の「メガリージョン」、1つの密度の濃い空間ができると思うんです。それをつくり出す1時間で結ぶリニア。それを補完、代替する東海道新幹線。なので、メガリージョンの中の交通の担い手は私たちだと思います。

 日本の将来を悲観する向きもありますが、東京~名古屋~大阪が日本経済を支える、成長を支える地帯じゃなくちゃいけない。それを成り立たせるのはリニアなので、それの担い手として力が発揮できるのは、私たちの誇りですね。

そのとき、東海道新幹線はいらなくなるのでは。

金子:そんなことないです。

いらなくなるというのは極論ですけど、ほとんどいらない。

金子:いや、それは直行する人はそうでしょう。でも大阪から名古屋に来る人、どっちを使ってもいいですよね。

まあ、いいですけど。

金子:それから東海道新幹線が通る東海地方は静岡県も含めてにぎわいのあるところ。今だと368本走らせると窮屈なダイヤになる。もっと「ひかり」や「こだま」を止めたら、もうちょっと地域が活性化するという期待に応えられていません。ぱんぱんのダイヤをつくっているので。だから東海道新幹線とリニアの2つを一元的に経営することで可能性が広がると思っています。

 それともう1つは、昔からの議論で、技術が発達するとテレビ電話とかネットとかで情報伝達ができるので、出張する人っていなくなったり、減ったりするんじゃないのという議論が結構あります。それは事実に全く反していて、2003年から今日に至るまで、出張のお客さんは増え続けているんです。

 やっぱり会わなきゃだめだということが多くて、イノベーションとか知識創造は、人が密度濃く会うことで生まれて、経済発展の元が生まれるんだと思うんです。1時間圏内にしたら、密度の濃い知識創造ができやすいし、そういう空間に仕上げて、20年後のことなので分かりませんが、きっと需要も付いてくる。

 交通政策審議会の需要予測は、控えめな予測だと思っています。名古屋まで開業して10%(収入が伸びる)としたが、もうちょっとあるんじゃないかと。大阪も15%としたが、これぐらいは伸びるだろうと思ってやっているんですね。

 どっちかというと航空からの転移を中心に(予測数字を)弾いていますが、経済がもうちょっと活性化すれば自ずと移動する人は増えて、私たちはリニアおよび東海道新幹線も余力ができますよね。最初に思惑で出している収支の形を超える努力をする。強みは両方持っていますので、競争しているわけじゃなくて。

リニアを造る理由に、東海道新幹線の大規模改修があったが、今でも変わっていない?

金子:大規模改修は必ず必要です。そうしておかないと東海道新幹線、いつか老朽化して使えなくなります。

今のやり方でいくとそうなると。

金子:そうです。今もう着手しているので、ならないと思いますが。しっかり最後まで今の大規模改修を成し遂げないと、どこかでガタがきます。それで今、大規模改修を完遂することによって2本できるんですね。初めは、この大規模改修というのをやるのに、昔あったみたいに半月ちょっと新幹線を休んでやらないといけない羽目になると思っていました。しかし、予防的な補修で何とか東海道新幹線の機能を殺さずに大規模改修を成し遂げることができるというめどが立ちました。でも、だからといってバイパスがいらないわけじゃありませんので。

それでも、リニアがいるわけですか。

金子:地震が起こるかもしれないし。東海道新幹線は1日47万人が使っていて、こんな路線は世界に例がありません。ユーロスターはせいぜい3万人。それからワシントンD.C.とボストンを結んでいるアセラは1万人いきません。桁が違うんですよね。私たちの会社にとって、リニアで複線系にするのは、国や会社のリスクを軽減するということになります。

 もう1つ、私たちの次の成長といいますか、新幹線1本だけよりも、超電導を使って2本持つというのは、会社自身も大変飛躍させる。リスクを軽減して、成長の素をもたらす。元が取れるかどうかという短期的なことでなく、長い目で見たら絶対に造った方がいい。そういうことを、これから行く(海外での)IRでも言うわけです。

外国人投資家が「なるほど」と言う?

金子:みんな「なるほど」と言いますよ。

言いますか。

金子:「なるほど」と言います。たまに言わない人がいて、そういう人は株を売っちゃう。