政府が本当に知恵を出された

先ほど、「財投は借りてない」とおっしゃった。

金子:財政投融資をそのまま借りたわけではありません。財政投融資というのは貸せる機関が決まっているので。

そうですね。財投機関がある。

金子:国の事業をやる機関なんです。国の事業をやっているのは鉄道・運輸機構という、昔の鉄建公団(日本鉄道建設公団)ですね。あそこ(鉄道・運輸機構)は今まで自分の整備新幹線を造ることには財投を借りていたんですが、人におカネを貸す権能が与えられてなかったので、法律を変えてJR東海が中央新幹線の事業に使うことについては貸し付けていいという法律に変えまして。

そうですね。ですから私は先ほど、失礼かもしれないけど、そこ(鉄道・運輸機構)に融資をする能力がないのではないかと言った。

金子:いやいや、能力は与えたんです。与えて、それから私たちが契約した。本当の財投だったら、いろいろ監査が入る。国民のおカネを直接貸すという論理にどうしてもなるんですね。だから監視して、「透明性があるか」とかの議論になる。それと、銀行から借りるのと違う条件のおカネを借りるのは、私たちにはできません、と。銀行から借りるのとまったく同じ条件にしてくださいというのが、私たちの申し上げたことです。「それでいいよ」ということなんです。

ただ、無担保で3兆円も、しかも30年元本返済据え置きで金利0.8%って、一般の金融機関からそういう条件のものが出たケースは、いろいろな金融機関の方にうかがったが、「聞いたことがない」と言います。ですから、通常の融資のスキームとは相当違うと思うんですが。

金子:だから、政府が本当に知恵を出されたということだと思います。補助金だったら税金が出ていくわけですよね。財投は一種の国債、財投債を発行して、それで調達したカネを財投の使い先におカネを貸して、また返してもらうという仕組みですよね。要するにおカネが、補助金とか税金をそのまま使うのとは違うわけです。だから政府においても「この事業では、JR東海はきちんと返せる。リニアの事業をやっても大丈夫だ」という判断をなさった。その政策効果として大阪までの開業を早くすることができるという期待をして、決心していただいて、決断いただいたということですね。

その決断は、安倍首相がされたということですよね。

金子:いや、それはよく分かりませんが、安倍総理以下、国土交通大臣、あるいは担当大臣、政府としてなさったということですね。

最初にそのことを発言されたのは安倍首相だから、「安倍主導」で。

金子:「安倍主導」って……。

向こうはちゃんと返せると思っているから(貸した)。

金子:はい。

財投がなくてもできた

ただ、返すのは、もちろん金利は払うスキームですが、30年後から返すわけなので、返済が終わるのがかなり先になる。

金子:返し終わるのは40年後ですね。

そうですね。ですから、元本を返す時期ですね、30年後からの10年間。

金子:何回かにおカネを分けていきますが。1つひとつの内訳は30年据え置き、10年の均等払いですが、5回に分けてそういう契約を結んでいるわけですね。

そのときに、ちゃんと返せるのかどうかって、なかなか政府側も判断できない。

金子:判断されたということなんですよ。そこに疑問を持たれると、この契約は成り立たなかったんです。そこはやっぱり決心されたということなんです。この事業は本当に財務的にうまくいくのかという懸念があるからそういうご質問が出る。

 こういうふうに考えていただいたらと思うんですが、政府が貸さなければ、ちょっと時間はかかったけど、自分の稼ぎと社債を発行して、やっぱりおカネは調達して造ったんです。政府が貸さなければ、財投を活用した仕組みがなければできなかったのならまた話が違いますが、もともとできたんです。

 私どもはもともと造るつもりだったんです。それを早めるために政府に知恵を生み出していただいて、私たちはそれが大変有効な施策なので、「ありがたい」と言って乗ったということ。政府が登場しなければ、社債を発行したか、民間の銀行から借りたか、どっちかだと思います。時期、タイミングが遅れて。そこを、「それならば私が」というのが政府のお立場だったと思います。

擦り合わせはあった

そうすると、要するに政府が勝手に言ってきた、と。

金子:政府のご提案を「勝手に」と言うと申し訳ないですが。

事前に、JR東海さんとある程度の詰めというか、こういうことをやったらどうなるみたいな話はあった?

金子:ずっと「知恵がないね」ということだったんです。

どちらに。

金子:両方に。「早く大阪までやりなさいよ」「ちょっといい手がないですね」と。政府に言い続けてきたのは、大阪まで早くやりたいが、何かいい案を政府の方でお考えいただくならば、私たちも検討しますよと。だけど、経営の独立、投資の自主性はきちんとして、経営がそれによって影響を受けないようでないと、受け入れないかもしれない。そういうプロセスで、財投の案が提示された。「これならどうだ」と言われ、「それならば、お願いします」と。

 (話し合いの)最終の場面で「いくらなんだ」と言われ、「名古屋まで造るまで、民間(銀行)か社債で3兆円借りようと思っていたんです」と答えました。そういう擦り合わせというか、意思統一はあるんです。

 

もっと早く造るために、もう何兆円か投入するという話になったら。

金子:ありません。それはあまり有効でもありません。あとは工事能力なんですね。まず名古屋まで造るんですが、今回の融資でリスクは減りました。財務の経営的な話と、もう1つはやっぱり工事の話。おカネがたくさんあっても工事が進まないとできない。もうこれ以上早く造るためにプッシュすることはできないということだと思います。