次に、社内の仕事の仕方についてトップダウンで見直しをかけます。まずはリーダーたちがどのように意思決定を行っているかを精査します。

 会議ばかりが多くて意思決定が遅くないか。会議のための膨大な資料準備に従業員の時間が使われていないか。リーダーたちが効率的、効果的、かつスピード感を持って物事を決めるようにならない限り、従業員の負荷は軽くなりません。トップダウンでの見直しを重視するのももっともです。そのうえで、企業価値を向上させるために不可欠な「ミッションクリティカルな仕事」を明らかにすると同時に、変革を推進するリーダーを組織内外から発掘し、これらの仕事に任命し、達成に向けた高いインセンティブを与えるのです。

 これまで述べてきたことは、まさにガバナンス改革に不可欠な作業です。会社の変革を我が事と捉えられる、まさにオーナーマインドを持つ人を中心にガバナンスしていこうとしているのです。

 3Gキャピタルの例は、これらの作業を投資ファンドが株主として半ば強制的に行っている所が興味深いと言えます。逆に言えば、硬直化したガバナンスは、株主のパワーで激しく変えない限り、変えられないのかもしれません。

 よく考えれば、投資ファンド自体も投資家から資金を預かり、そのリターンをあげるために「我が事」として活動する組織なわけです。投資先に同じようなメンタリティを求めるのも当然でしょう。企業活動に口先で注文をつけるだけではなく、自らのアプローチやツールを携えて投資先に対してマインドの変革を求めるところが新たな潮流なのでしょうか。

日本企業に欠ける創業メンタリティ②「革新志向」

 そしてさらに欠けているものが「革新志向」。言い換えれば、「尖り」です。

 官僚的な組織の中で多くの従業員の目線は驚くほど内向きになってしまいます。社内の仕組みや手続きをこなすことに汲々とし、社内に敵を作らないよう社内調整を無難にやりすごすことに神経を注いでいるうちに、彼らの目線は極めて内向きになってしまいます。競争環境の変化、顧客の変化に目を向けること無く、社内論理を順守することが正義となり、これを変えることに直感的に抵抗するようになります。

 「革新志向」、「尖り」を持つことは社内の異端分子、すなわち組織の敵となることを意味します。しかし、対立構造を持った組織が「革新志向」や「尖り」を保持することは不可能に近いと言えます。

 この状況を打破できるのはトップしかいません。岩盤のように固くなった社内の仕組みや手続きに異を唱え、時にはこれを逸脱できるのはトップだけだからです。

 そしてその社内の仕組みや手続きから解放された従業員のマインドに、革新性と尖りを取り戻すにはどうしたら良いか。世界に目を向け、世の中の変化を全身で受け止めて、社会をより良く変えインパクトを与えることで気持ちを奮い立たせるように、従業員一人ひとりの心に火を灯すことが大事ではないでしょうか。

革新志向を取り戻すための手法
「何がこの会社を偉大にしたか」を思い起こす

 まず試みるべきは過去、自社が輝き、世の中から賞賛されていた時代に時計の針を巻き戻すことです。顧客は自社の何を評価し熱狂したのかをもう一度思い起こしてみるのです。

 それを可能にした組織の行動は何か、顧客の支持を得るために組織として絶対妥協する事のない「譲れない一線」はなんだったのか。今でも組織の中に習慣として残っているものも多いはずです。

 例えば、トヨタ自動車では「現場」「現物」「現実」という言葉が組織に定着しているといいます。トヨタという会社の競争力の原点を支える従業員の行動、考え方の根本がこの言葉に集約されているのでしょう。あなたの組織で念仏のように呟かれる言葉は何でしょうか。

 さらに重要だと思われるのは、自社が提供する商品やサービスを通じてどのような社会的課題を解決しようとしていたかに目を向けることです。業界構造や習慣、規制が顧客の利害に反していたり、顧客の潜在的なニーズが技術的な制約で満たされてなかったり──などといった社会的課題の解決に関わっていたのではないでしょうか。構造的な顧客不満足を、顧客の代弁者として解決してゆくことは、大きな社会的な意義があります。

 したがってその解決にチャレンジをする企業は、顧客から熱狂的な支持を得ると同時に従業員からも高い忠誠心を得られるはずです。顧客に喜ばれ、社会的に意義あることに関与することにより、会社は単に給与を得るための場所ではなくなります。より大きな使命を果たすために、高いモチベーションを持って働ける場となるのではないでしょうか。

(次回に続く)

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 創業メンタリティとは何か──。持続的成長をなしとげる会社は、事業を軌道に乗せた野心的で大胆な創業者の態度と行動を持ち合わせています。自分たちを革新勢力と考え、従業員がみな使命感を持ち、複雑性や官僚主義など戦略の実行となる障害が排除されます。こうした態度と行動の組み合わせによる意識の枠組みが「創業メンタリティ」です。

 コンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニーによる調査分析の結果、創業者が経営に携わっている企業はそうでない企業の3倍になり、特に高い業績をあげつづけている企業では、低業績の企業に比べて創業メンタリティの特徴を4~5倍も備えていることがわかっています。どんな企業でも、創業メンタリティと業績、株価、競争力のあいだに強い相関関係があるのです。

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