例えば、新しい企業が成長してフォーチュン500社に入るまでの期間は、20年前と比べて半分以下に短くなっています。最速でランクインした「成長スピードの世界記録」も、大幅に更新されています(注8)。

(注8) こうした推計は、企業がフォーチュン500社の規模に達するスピードを調べるためにベイン・アンド・カンパニーのグローバル金融データベースをもとに実施した分析から来ている。また、30年以上にわたる世界中の8000社の企業のデータベースを利用して、世界最速で売上が100億ドルを超えるまでに成長した企業を調べた。その結果、この規模に達しうるスピードは過去数十年で何倍も速くなっていることがわかった。10年前に1980~1990年代の成長スピードを調べた同様の分析でも、「規模拡大スピードの記録保持者」について同じ結論に達した。

 新興企業が以前より速く台頭していることを示す一つの指標として言えることがあります。競争が起きている分野の40パーセントでは、最強の会社──つまり利益額が業界一で再投資力もトップの会社──は、最も規模が大きい企業ではないのです(注9)。

(注9) Bain Brief:“Strategy Beyond Scale,” February 11, 2015.

 技術が進歩し、価値を生み出す企業の中心が、企業の規模がさほど重要でないサービスやソフトウェアといった分野に移っているため、規模の優位性が小さくなってきています。結果として若い革新勢力がかつてないほどに既存企業のライバルになっているのです。かたや、そうした革新勢力が保守大企業の仲間入りをして突如失速することもよくあることです。また、失速した会社が復活するのが、以前よりもずっと難しくなってもいます(注10)。

(注10) ベインのチームによる、1994~2014年にフォーチュン500社リストに参加および脱落した企業の分析に基づく。さらに、過去10年における最大のストールアウト50例の売上減少スピードを研究することで正当性を確認した。

 このように台頭が速ければ退場も速い環境になったことで、多くの業界では戦略的ポジションの再編スピードが上がり、市場のリーダーとフォロワーの位置が目まぐるしく変わっています(■図Ⅰ-3)。

■図I-3 規模拡大/縮小スピードの加速

 航空業界を例に挙げてみましょう。市場が確立していて資本集約的で参入に高い壁があり、強力な破壊的技術もない航空業界は、一見すると大きな戦略的再編は起こりそうにはありません。

 しかし、それがここ20年のあいだに起きているのです。企業価値に基づく航空会社の上位20社を1999年と比較してみると、業界のリーダーが半分以上交代し、倒産も珍しくありません。16年前にランクインしていた会社の約半数は独立企業ですらなくなっていることがわかります。

 中国国際航空のように、1999年には圏外だった企業が世界有数の航空会社になった例もあります。こうした現象は航空業界に限ったことではありません。全産業の経営幹部の半数以上が、5年後には主なライバル企業が今と違っているだろうと考えています(注11)。新興企業が成長し、業界で力を持つようになるスピードが加速している証拠です。

(注11) 2011年3月にエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)がベイン・アンド・カンパニーのために行った、世界中の377名の経営幹部を対象とした調査。

次回に続く)

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