このような会社には全社員が「自分事」と思えるはっきりした使命感と焦点が芽生えます(普通の会社では自社の存在意義を答えられる従業員が40パーセントしかいないのとは対照的です)(注2)。

(注2) ベイン・アンド・カンパニーの著書『リピータビリティ 再現可能な不朽のビジネスモデル』のためにエフェクトリー社(ヨーロッパで従業員調査を実施している企業)とベインのチームの共同で行った、30万人の従業員を対象とした調査に基づく分析。

 さらには各自が強い個人的な責任感を抱くようになります(世界的な調査会社・ギャラップ社によれば、普通の会社では心から自社にエンゲージしている従業員はわずか13パーセント)(注3)。

(注3) Gallup, State of the Global Workplace, 2013.

 組織的には、複雑性や官僚主義など、戦略をつつがなく実行するうえで、障害となりうるものがすべて排除されます。ビジネスの細かいところにまでこだわり、顧客と直に接する現場の社員を称える。こうした態度と行動が組み合わさってできる意識の枠組みこそ、これまで注目されてこなかった成功の秘訣なのです。

 わたしたちはこれを「創業目線」と呼びます。

 創業目線は、成長途中の新興企業が、規模と資金力で勝る既存企業と競争するとき優位に立つカギであり、大きく3つの側面に分けられます。

「創業目線」の3つの要素

①革新志向

②オーナーマインド

③現場へのこだわり

 上記のように、創業目線は、①革新志向、②オーナーマインド、③現場へのこだわり、の3つの要素から構成されています。これらは創業者が率いている会社、あるいは創業者の影響が会社の原則や、規範、価値観に残っている企業に顕著に見られ、従業員の日々の意思決定と行動の道しるべとなっています。

 ベイン・アンド・カンパニーで行った情報分析、調査、インタビューなどの結果、新興企業に限らずどんな会社でも、創業目線と業績、株価、競争力のあいだに強い相関関係があることがわかりました。

 例えば、1990年以降の株主への利益還元に着目すると、創業者が経営に携わっている企業はそうでない企業の3倍になります(注4)(■図Ⅰ-1)。

(注4) キャピタルIQ、企業の決算報告、文献調査から得たデータに基づいたベインによる分析。創業者経営企業(115社)は、2014年度S&P 500社のうち、創業者が過去10年中8年以上CEOあるいは取締役会メンバーを務めていた企業である。

■図Ⅰ-1 S&P 500構成銘柄(2014年時点)の利益還元の比較

 また、特に高い業績をあげ続けている企業では、低業績の企業に比べて創業目線の特徴を4~5倍も備えています(注5)。

(注5) 世界中の200社を対象としたベインによる評価。内部事情の研究は文献調査と専門家の証言に依拠している。

 さらに、ここ10年のあいだ、継続的な利益成長を続けている企業が10社に1社ほどしかないと冒頭で述べましたが、その3分の2近くは創業目線に基づいて経営されています。こうした数字は注目に値するものです。

 しかし、多くの企業は規模が大きくなるにつれて、創業目線を失ってしまうのです。

 成長と規模拡大を目指しているうちに、組織が複雑になる、プロセスやシステムが増える、革新志向が薄れる、人材レベルを維持するのが難しくなるといった問題が出てくるためです。

 こうした企業内部の問題は根深くて表面に現れにくいのですが、いずれは外部からも見える経営難につながっていきます。下の■図Ⅰ-2は世界中の経営幹部325人に行った調査の結果で、組織内で感じられる創業目線は事業規模が大きくなるほど弱まることがわかります。

■図I-2 事業規模拡大による創業目線の減衰