経済産業省は5月、「新産業構造ビジョン」を取りまとめた。あらゆるものがインターネットにつながる「IoT」やビッグデータなどの技術革新によって日本が抱える構造的課題に挑み、解決することを目指したものだ。ビジョンは「スマートサプライチェーン」の構築に向けて、消費者ニーズを共有しながら製造から物流・小売りまでデータ連携を進めていくことが重要と指摘している。
日経ビジネス7月31日号では「もう迷わせない! 消費多様化の終わり」という特集を組み、的確な「おすすめ」をするためのデータ活用を強化する企業を取材した。「新産業構造ビジョン」取りまとめの座長を務める学習院大学の伊藤元重教授に、データの活用・共有などについて聞いた。
学習院大学国際社会科学部教授

今回のビジョン策定のポイントは何でしょうか。
「今回(ビジョンの取りまとめを行った)経済産業省の新産業構造部会の1つのキーワードはリアルデータでした。アマゾン・ドット・コムやグーグル、アップルはインターネットでやり取りしている情報については非常に強いです。ただ消費者は全ての買い物をインターネット上で済ますわけではなく、実際にはリアルの店で買うニーズはとても大きい。生鮮食品が典型例ですが、コンビニエンスストア、百貨店、専門店なども消費者にとって重要な買いものの拠点です。そこのリアルデータをうまく活用する仕組みを作り、店舗で集めた消費者のデータを生かして商品開発や生産改善に取り組むことが必要です。それができれば、ネットなどのバーチャルデータに強い企業との住み分けができると思います」
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