店内に入ると、まず目に入るのが、券売機。コンクリート打ちっぱなしのおしゃれな内装に似つかわしくない印象だが、ここで食券を買う。「トリュフパスタ単品」「ワイン単品」「トリュフパスタとワインのセット」から選んでボタンを押す。お客は食券を手に取り、カウンター席から店員に手渡す。税込み価格はパスタ単品が2900円、ワインとのセットが4000円だ。

経営するのは3人のオーストラリア人。お店のコンセプトは、「ONE DISH. ONE WINE. ONE ARTIST.」だ。料理も1種類だが、ワインも1種類。そして店内のBGMもCDではなくレコードでかける「レッド・ツェッペリン」のみ。究極の「専門店」だ。
オーナーの1人、セーラ・クレイゴ氏は東京に出店した理由をこう語る。「日本に来て驚いたのが、日本人が“専門店”に行って食事をすることです。すしが食べたければ寿司店に行き、ラーメンが食べたければラーメン店に行く。専門店に行く文化が根付いている日本なら、このトリュフパスタ店も受け入れられると思ったのです」。
「豊富なメニュー」がお客の満足度を下げる?
BAKEやOUTを取材してから、お店のメニューが気になるようになった。
先週末、友人と京都へ行ってきた。夕食に夏が旬のハモを食べようと、和食のお店に入った。メニューを見て驚いた。本日のおすすめが20種類以上もあるのだ。ハモ料理のお店と聞いてきたが、ハモ料理はおすすめの中に小さく書かれているだけ。おすすめ以外の食事メニューも50種類近くあった。加えて、飲み物もビール、チューハイ、焼酎、日本酒と約50種類。結局選ぶのに疲れて、いつも通り生ビールを頼んでしまった。
店側もメニューの多さに対応しきれていなかったようだ。7品注文したが、そのうち2品は「本日材料がありません」と断られてしまった。2時間ほど滞在し、最後に料理をもう一品だけ頼んだ。しかし、お客が増えて混雑していたからか。30分ほど待たされた挙句、「今日は作れません」と言われてしまった。
接客にあたっていた店員の中には、まだアルバイトを始めて間もないであろう若い男性がいた。彼は100種類を超えるメニューをほとんど覚えておらず、注文をとるのも、料理や飲み物を出すのも一苦労のようだった。
「お客のため」と思って「豊富なメニュー」を用意することが、かえってお客の満足度を下げてしまっているのではないか。やみくもに、メニューを増やすのではなく、お客にとって必要なことを見極めることが大切だ。
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