手土産を選ぶのが苦手だ。デパ地下をうろうろするけれど、決められない。何周もしてやっと買う。買ってからは「あっちにすればよかったかな」と後悔する。記者は「迷える消費者」の1人だ。

 今回、日経ビジネス7月31日号では、「もう迷わせない! 消費多様化の終わり」という特集を組んだ。一般的には「消費者は多様化しているから、商品も多様化しなければならない」と言われるが、本当にそうなのか。商品が多様化することで消費者が選び疲れを起こしているのではないか。誌面では、商品を1つに絞ることで成功している企業も取り上げた。

 東京・自由が丘。スイーツショップやカフェがひしめく同エリアで、客足の絶えないお店がある。チーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」だ。

 記者が訪れたのは、7月中旬の平日。平日の昼間にもかかわらず、次から次へとお客がやってくる。皆、買うものは同じ。焼きたてのチーズタルトだ。

 記者は地図を読むのが苦手で、取材先に行くときもよく迷う。しかし今回は迷う余地がなかった。店舗は一面ガラス張りで中の様子がよく見える。ショーケースいっぱいにチーズタルトが並んでいる。

幅5mを超すショーケースに、約200個のチーズタルト。商品はこの1種類だけ。

 スイーツを買うときに、ショーケースの前であれこれ悩む人も、このお店では悩む必要がない。ショーケースの前を、さっと通ってレジに向かい、会計をするだけだ。自分一人で食べるなら1つ、友人への手土産なら6個入り、といったように買う個数を決めればよい。お客の様子を見ていたが、来店して帰るまで1分もかかっていなかった。