日経ビジネスでは7月30日号特集「沈まぬ東京 五輪後『悲観論』からの脱却」で、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催後の反動も予想される中、五輪という機会を活用して社会にインパクトをもたらす事業を模索する企業の取り組みや、2020年代の東京に真の競争力をもたらすための提言をまとめた。開催まで2年を切った今こそ、東京の課題と強みを正しく認識し、将来の経済・社会づくりの基盤を整えることが求められている。

 大会期間中に1000万人が来日するとされる東京五輪。初めて東京を訪れた人に、一度だけではなく、また来たいと思ってもらえることこそが、五輪後も活力を維持するためのカギとなる。リピーターを作るにはまず、いかに東京を楽しんでもらうか。楽しさを演出する、2つの取り組みを紹介しよう。

 2020年東京五輪でトライアスロンの会場となる東京・お台場。商業施設の一角にこの夏、出現した「ミュージアム」に次々と人が吸い込まれていく。デジタルアート集団「チームラボ」の国内初の大型常設展となる「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス」。6月21日の開業から、日付指定のチケットは全て売り切れる盛況ぶりだ。

枠組みはなく壁や床にアートが広がる(写真:竹井 俊晴)

観客が「作り手」となるアート

 特徴は「参加型」で「シームレス」なこと。1万㎡の広いスペースだが、館内地図はどこにもない。ミュージアムという枠組みにもかかわらず、絵や額縁もほぼ見当たらない。520台のコンピューターと470台のプロジェクターを使って、壁や床、空間に映像を投射。システム同士が連携することで、いつも違った「作品」を浮かび上がらせる仕組みだ。

 例えば、壁に映された川に手を入れると、遮られた水が二股に分かれて流れていく。壁を移動する動物に触れると、花びらとなって散らばっていく。自分が描いた絵が床を泳ぐ部屋もある。いわば、観客それぞれが「作り手」となる発想。一方で、壁を飛ぶ鳥はあらゆる部屋に出入りし、チームラボの担当者でも「次、どこに現れるかわからない」のだという。

アートの中に入っていくと川の流れが変化するなど「参加型」だ(写真:竹井 俊晴)

 チームラボの猪子寿之代表は「デジタルの進化で個人が発信できる時代になり、人は能動的に動くことの楽しさに気づきはじめた」と話す。猪子氏によると、生産されたものの消費を楽しんでいたのが20世紀型の世の中。今後は情報革命で脳が拡張され、自らの作り出したものを共有することが一般的になっていくという。常にアップデートしていくことが21世紀型の特徴だそうだ。

デジタルアートのミュージアムを開業したチームラボの猪子寿之代表。「常に変化するので世界が広がり、いつまでも遊べる」と話す(写真:竹井 俊晴)