日経ビジネスでは7月30日号特集「沈まぬ東京 五輪後『悲観論』からの脱却」で、2020年の東京五輪・パラリンピックを活用して社会にインパクトをもたらす事業の創出を模索する企業の取り組みや、東京に真の競争力をもたらすための提言をまとめた。五輪開催後の反動も予想される中、開催まで2年を切った今こそ、東京の課題と強みを正しく認識し、将来の経済・社会づくりの基盤を整えることが求められている。
「世界最大のショーケース」とされる五輪では、これまでも新たな産業や技術が生まれてきた。1964年の東京五輪でその象徴となったのは「警備業」だった。62年設立の日本警備保障(現セコム)が選手村の警備を担当し、警備員の存在が全国に知れ渡った。この大会の組織委員会事務局次長を務めていた村井順氏が翌年立ち上げたのが、綜合警備保障(ALSOK)だ。2020年東京大会では1万4000人の警備員が「安全・安心」づくりに従事する。ALSOKとセコムが中心となって、全国100社超の警備会社に呼びかけ、「共同企業体」を組織する。二度目の東京五輪を通じて、日本の警備はどう進化するのか。ALSOKの青山幸恭社長に見通しを聞いた。
2020年の東京大会には期間中に世界から1000万人の人が訪れると見込まれています。民間警備は、混乱や事件・事故にどう備えますか。
青山幸恭社長(以下、青山):まず、2つに分けて考える必要がある。競技会場など施設内とそれ以外だ。組織委員会としての対象は施設内。ここでは、社内はもちろん、ともに警備に当たる他社のスタッフや警察と緊密に連携することが重要になる。例えば、不審な動きをしていたり、急にしゃがみこんだりした人がいたとする。そうした時に連絡しあうことで、機敏に対応できる体制づくりが必要になる。
ボランティアとの連携も大事だ。ボランティア向けの教育も用意している。多くの人がいても、烏合の衆では意味がない。準備万端の120点くらいの体制にして、本番を迎えないといけない。

1975年東大法学部卒、大蔵省(現財務省)入省。06年関税局長。08年に綜合警備保障入社。10年副社長を経て12年から現職。
天災対策は訓練しかない
施設の外で課題となるのは、警備の人手不足への対応だ。人手不足は日本の警備業にとって最大の制約とも言える。今年6月の保安関連の有効求人倍率も7倍。今後はさらに少子化が進み、警備員の採用が厳しくなる。いかに省人化を進めていくかという点では、ロボットの活用がカギとなるだろう。カメラもある意味ではロボット。五輪会場で使われるかはわからないが、ドローンの活用も広げていく。見るだけではなく、音、においをセンサーで感知するなど、人間の代わりに使えるものを増やしていく。
安全・安心の提供が役割だとして、地震など突発的に起こる事象への対応をどう考えるか。
青山:天災は予測できないので、減災措置しかない。直下型地震はもちろん、水害の心配もある。東京ということで一つ懸念しているのは、国、都、区、警視庁、消防庁などが災害時にどうまとまるか。天災は事前に予測できないとはいえ、いかに備えるは大切だ。それには、訓練を重ねるしかない。
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