「今はバラバラになっている日本の地方の情報をひとつにまとめ、見るべきもの、食すべきものなどを選び、ストーリーを付加して伝えていく。つまり、物理的に人を地方に運ぶだけでなく、情報においても案内できるような機能を空港が持つということだ」

 大西社長は今後の展望をそう語る。

羽田空港の年間利用者8500万人に地方の魅力を発信

 情報面での案内に関しては、羽田空港ならではの強みがある。旅客ターミナルで旅行者に対応するコンシェルジュの存在だ。羽田空港の利用者は年間約8500万人。それだけの母数の中からコンシェルジュに日々寄せられる質問や相談の内容を、「Flying Visit Japan」の運営に生かすことで、従来のメディアにはないきめ細やかな情報発信をする。

 具体策のひとつが、日本各地のタウン誌、フリーペーパー、観光課のパンフレットなどを収集・研究する日本地域情報振興協会(NiCoA)との提携だ。地方の媒体には、主要メディアが取り上げない観光情報が載っていることも多い。空港で把握した旅行者の細かなニーズに応える情報発信のためには、こうしたマイナーな情報源の開拓も必要だ。

 羽田未来総合研究所は観光ポータルサイトの運営以外にも、羽田空港を拠点として文化・芸術に関する情報発信に取り組むという。これまで以上に多くの外国人が東京を訪れる五輪の機会に向け、単なる通過点でなく旅行の体験のひとつとなるような空港を目標とする。

 「旅行者はもちろん、飛行機に乗る目的のない人も羽田空港に来て、地方のユニークな魅力に触れてほしい。単に情報やモノを集めるだけでなく、全体で日本をアピールできるような空間づくりにも取り組みたいと思っている」(大西氏)

ビザが繰り返すキャッシュレスの「実験」

 訪日客の満足度向上を考えたとき、しばしば課題に挙がるのが決済の「キャッシュレス化」。日本の現在のキャッシュレス比率は20%程度と、先進国の中では低い水準だ。訪日客の利便性向上には対応が欠かせない。世界中から旅行者が集まる五輪の機会はキャッシュレス決済推進の強い追い風になる。実際、英国はその一例だ。07年に37.9%だったキャッシュレス比率は、12年のロンドン五輪を挟んで、16年には68.7%にまで上昇した。