会議不要の「円卓」職場

 ボーダレス・ジャパンのように生産性を高めるにはオフィスレイアウトがカギを握る。人気のフリマアプリを運営するメルカリ(東京都港区)もオフィスレイアウトにこだわっている。2015年に同社のオフィスに取り入れたのが、4~5人が余裕を持って座れる大きめの「円卓」だ。

 「円卓には、コミュニケーションを活性化する心理的効果があることが知られている」(心理カウンセラー)。円卓に座る全員の顔が見え、四角い机に比べて丸い形状は気持ちをリラックスさせるという。中華料理が円卓で振る舞われるのもこのためだ。

 円卓には、新サービスの開発など、同じプロジェクトに関わるメンバーなどが集まって仕事をする。互いに声がかけやすく、相談したいことがあれば、その場で打ち合わせができる。会議の時間を確保したり、皆でぞろぞろと会議室に移動したりする必要もない。アイデアを思いついたらその場で共有し、問題があればメンバーが互いの知識を持ち寄ってすぐに解決する。

 パーティションで区切った個室感覚のオフィスの方が、集中力が高まり仕事の効率が上がると一見思えるが、実際には一人だけで完結する仕事はごく一部。しかも、日々様々な課題やトラブルが発生する。

 特に、「『ドッグイヤー』で動いているIT業界では、1つひとつの作業や意思決定のスピードが命だ」(メルカリの掛川紗矢香執行役員)。細かく区切ったオフィスでバラバラに仕事をするよりも、1カ所に集まった方が、仕事の効率は高まる。それがメルカリが出した結論だ。もちろん、静かに1人で集中して作業したい時もある。そういう場合は、オフィスの端の休憩スペースなど、好きな場所で作業できる。

 社員同士のコミュニケーションを重視するメルカリでは、実は在宅勤務も認めていない。IT系の企業では、ITツールを活用して自宅や出先で仕事をする「テレワーク」を認める企業が増えている。それでも同社は、「同じ場所で仕事をする」ことにこだわる。

 グループウェアの「Slack」などのITツールを使って効率的に情報共有する工夫をしているが、それではコミュニケーションの「速さ」と「密度」が不十分だという。「何かトラブルが発生した場合、その場で相手の表情や声から緊急性や重要性を判断できたり、アドバイスした内容をどの程度理解しているかも分かる。

 在宅ではそうはいかない。育児が忙しい社員もいるが、フレックスタイム制や認可外保育所や病児保育に対する補助を制度を設けて、会社に来やすい環境を整えている」(掛川執行役員)。

 生産性向上の手法は各社異なる。ただ共通しているのは、無駄な時間をどう削減するかだ。1人で悩むよりも気軽に話せたり、わざわざ会議を開かずに済んだりすることで残業を抑制している。根本的な残業の原因を断ち切ることで時短となり、成果が出る働き方改革につながっている。

円卓がずらりと並ぶメルカリのオフィス風景(写真撮影:北山宏一)
円卓がずらりと並ぶメルカリのオフィス風景(写真撮影:北山宏一)