会議が減ったことによって社員の残業も大きく減りました。それだけでなく、さまざまな部署から社員を集めてプロジェクトチームをつくりやすくなったし、クリエイティブな仕事に使える時間も増えています。イノベーションを継続するには、新しいことを考え続ける必要があり、同書を生かした成果は大きいと思います。

経営についての本はどんなときに読んでいますか。

石川:基本的に移動中が多いですね。読むのは月1、2冊ほどですが、考えが足踏みしたとき、ヒントを探そうと書店にいくこともあります。選ぶ基準はまず筆者から探すことが多いですね。

石川氏によると「課題解決に役立つことは1冊につき1つか2つ」という
石川氏によると「課題解決に役立つことは1冊につき1つか2つ」という

ラジオのケースは今の技術に置き換えて考える

 課題解決にダイレクトにつながると気づいたときには、その場ですぐに部下にメールや電話で連絡します。課題に関連したところは、自然と頭に入ってきます。このため、読みながらメモをとったりすることはありません。メモしないと忘れるようなら、それまでの内容だと思います。

 課題解決に役立つことは1冊につき1つか2つだと思っています。素晴らしいことがたくさん書いてあっても、自分に無関係であればその知識は不要です。

 経営者にとって本を読むことは人と会うのと同じくらい重要です。本と人のハイブリッドが新しい価値観を生むと思います。ただし、自分のなかに問題意識がなければ、いくら本を読んでも何も伝わりません。だから、まずは問題意識が大切です。

本をきっかけにした大学院での学びは、経営にどう生かしてきたのでしょうか。

石川:先輩経営者であるファーストリテイリングの柳井正会長兼社長には「自分が大学院に行くくらいならば、むしろ大学院を出た人を雇えばいいのではないか」と言われました。しかし、実務家としての体験が頭に入った状態でフレームやケースを学ぶため、自分のしてきたことが整理でき、説明できるようになったと思います。哲学やビジネスモデルを可視化して私の持つノウハウを伝えるのは、組織をサステイナブルにするうえで不可欠です。

 授業で扱う事例にはやや古いと感じるものもありますが、自社の課題解決に向けてどこかにヒントがあるのではないかと考えながら聞きました。たとえばラジオを扱った場合、今のテクノロジーに置き換えるとどうなるかと考えました。

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