異なる価値観との出会いが、苦痛から喜びへ

 そうこうするうちに、異なる価値観との出会いが、苦痛から喜びに代わっていくから不思議だ。

 アジア地域で一人、共用のプロダクト・スペシャリストを採用するときなどに、考えが合わずによく揉めることがあった。顧客と議論を盛り上げられる軽快な人間を他国の営業は好むのだが、日本の営業は、軽すぎて顧客の信頼が得られない…として拒絶することが多い。たまに折衝負けして”軽快な人”を雇うと、意外と普段口の重い顧客が喜んで語り始めるようになったりすることもあった。そんなところから、自分の常識で決めつけたり、思いこむことの危険を肝に銘じたりしたものだ。

 グローバルビジネスにおいてはきわめて初歩的ともいえる、こんな悩みや葛藤に日々苦しみながらも2008年11月、外資系企業で社長になった。その理由は、ひとえに、異なる価値観と協働することのメリットと喜びを、100%腹落ちさせられたことによるところが大きいと今でも考えている。

多様性を大事にすると化学反応が生まれる

 なぜ異なる価値観を大切にするのか?

 もちろんさまざまな理由がある。自身の経験に裏付けられた信念は、「多様性を大事にすると化学反応が生まれ、新しいアイデアが浮かぶ。そして激動の時代に生き残れるビジネスが創出できる」ということだ。実利に焦点をあてないと、多様性の努力はあらぬ方向に漂流していってしまわないかと危惧する。

 そのような思考を基に、昨今の日本で盛んに唱えられるようになった「働き方変革」の課題はどこにあるのかと考える。女性や中途人財の登用、外国人採用…。すべて効果的な提案だと確信する。でも登用された側が、どうも窮屈な思いを患っているように見えるのはなぜか?

 ワークライフバランス…なるほどそれも大事だろう。でもまてよ。皆が同じように7時や8時になると帰らされるのは変ではないか。夜中まで働きたい人もおり、5時に帰りたい人もいる。どちらの自由も認めてあげるのが真の「DIVERSITY(多様性)」ではないのか?

「働き方変革の手伝いをしたい」という思いで起業した

 ついに日本で始まった働き方変革に勢いをつけるために、グローバルビジネスの現場で目の当たりにした成功体験という燃料を投入するお手伝いをしたい。そんな思いで2013年人材育成会社を起業した。

 前例踏襲の呪縛はまだまだ大きい。何のためにやるのか、痛みを伴う変革の目的をはっきりさせないと、自身の心の中でも、抵抗する声がおのずと大きくなっていくものだ。変革を是として勇気づけるために必要なものは一つ、成功体験だ。

 がんばれニッポン! まさに変革の入り口に我々は立っている。次回は、グローバルビジネスの実戦経験を踏まえて、変革を必ず成功体験に導くためのポイントについて考えていきたい。普段は分別をもつように努力しているものの、ここではあえて本音で極論を記していくことで問題提起していく覚悟だ。