前者については、昨年11月にモバイル向け360度動画を専門に配信する子会社、360Channel(サンロクマルチャンネル)を立ち上げた。全日空の機体工場を見学できるコンテンツなどを提供している。モバイル向け360度動画は、専用のVR端末がなくても、スマホやPCでコンテンツを楽しめるので、ゲームより早く市場が立ち上がる可能性がある。

360Channelが提供するモバイル向け360度動画サービス。スマホなどで楽しめる(© 2016 360Channel, Inc.)
360Channelが提供するモバイル向け360度動画サービス。スマホなどで楽しめる(© 2016 360Channel, Inc.)
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産業向け、ファンドでカバー

 ゲームに動画にと、VRを一般の利用者が楽しめるコンテンツは用意した。それでも「VR市場をまるごと取りに行く」というコロプラの方針からすると、まだピースが足りない。日経ビジネス7月18日号の特集「VR(バーチャルリアリティー) 製造も営業も変える第3の波」でも取り上げたように、VRの活用が見込めるのはエンターテイメントだけではない。企業の製品開発や営業、人材育成など、いわゆる産業向けも有望な分野だ。ただゲーム開発に注力してきたコロプラが、ここを自社で攻めるには「リソースが足りず、無理があった」とコロプラの子会社、コロプラネクストの山上愼太郎社長は話す。

 そこで打ち出したのがファンド戦略だ。今年1月、産業向けも含めた有力なVRベンチャーに投資するファンド「Colopl VR Fund」を立ち上げた。コロプラネクストは実際にベンチャーに投資する役割を担う。投資金額の上限は5000万ドル。生まれたばかりの市場に投資するファンドとしては規模が大きく、コロプラが自己資金で運用している。エンターテイメント分野にも資金投下するが、建築デザイン向けVRを開発するベンチャーに投資するなど産業向けもカバーしている。

 「産業向けは消費者向けよりも売り上げが立ちやすい」と山上社長は話す。消費者向けではVR端末の価格が課題になっているが、産業向けは端末やサービスの価格がある程度高くても、利用価値があれば企業が積極導入するからだ。

 Colopl VR Fundの投資先の中心は米国。ベンチャー企業が雨後のタケノコのように立ち上がっているという。もともと米国ではグーグル、アップル、アマゾン、フェイスブックなどITの巨人が相次ぎ生まれ、圧倒的な存在感で市場成長の恩恵を享受してきた。VRでもその予備軍たるベンチャーが次々生まれているとすれば、従来のIT産業と同じような構図になると考えるのが自然だろう。

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