今年は米オキュラスVRの「オキュラスリフト」や、台湾HTCの「HTC Vive」も発売され、「VR元年」と言われています。なぜ今年になって続々と製品が出てきているのでしょうか。

吉田氏とPS VR(写真:的野 弘路)
吉田氏とPS VR(写真:的野 弘路)

吉田:偶然3社のHMDが今年登場したのではなく、2016年がVR元年であることは必然だったと思っています。元々、我々の中で「製品化するならここまでのスペックがあればいいよね」といった基準がありました。

 スマートフォン(スマホ)の普及によって、その基準を満たすスペックの部品が開発され、大量生産できるレベルになったのが去年くらいからです。開発チームのメンバーもVRを作りながら、2013年頃には「2015年か2016年が狙い目だ」と話していました。

かなり厳しい基準を設けていたのですか。

吉田:はい、かなりこだわりました。VRは人間の視覚や聴覚を乗っ取ってしまうので、良いものを作らないと気持ち悪くなってしまうんですよ。最初のVRの体験が、「VRってこんなものなのか」という感想だったら、普及しないですよね。

 VRは総合芸術みたいなものだと思っていて、視覚、聴覚、トラッキング、コントロール、コンテンツ。この5つがいい状態で全てそろっていないといけません。英語で「Sense of Presence」って言うんですけど、あたかも別世界に自分が存在することを信じてしまうような感覚のことですね。VRではこれが最も重要。ここまで持っていくのが大変でしたね。

有機ELの進化が後押し

 ディスプレーの進化は非常に大きかったですね。VRにおいて視覚というのは非常に重要で、ディスプレーは最も重要な部品の一つです。映像をリアルに見せるよう脳を錯覚させるためには、頭を動かしたときにどれだけ早く映像をかえられるか。その遅延が20ミリセカンド未満であれば、ほとんどの人が感じている現実のインプットと変わらないと言われています。もちろん解像度も高くないといけません。ディスプレーに求められる条件というのは非常に高いんです。

 技術の進化によってこれが年々改善されました。現在、我々は有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)をディスプレーに採用していますが、これも大量に手に入るようになったのは最近です。

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