全4503文字

 若きマクロン大統領は、どうすれば仏大統領として威厳が保てるかに腐心してきたようにみえる。EU首脳会議の記者会見などで間近に見る機会があったが、想像以上に小柄である。大きく見せるためか、いつも地味目の紺の背広に紺のネクタイと決めているようだ。話しぶりはゆっくりで、第2次大戦の英雄でもあるドゴール元大統領をまねているという説もある。

 トランプ米大統領がパリ協定からの離脱を表明したときには、“Make our planet great again”(われわれの地球をもう一度偉大に)と述べて、世界のかっさいを浴びたこともある。

 そんな威勢の良さは国際社会では評価されたが、フランスの国民には「上から目線」にみえたのかもしれない。「トントン」(父さん)と親しまれたミッテラン元大統領のようにはいかなかった。

 問題は、財政改革路線の修正に追い込まれたために、2019年のフランスの財政赤字が国内総生産(GDP)比で3.2%とEUルールの同3%を逸脱してしまうことだ。これではマクロン大統領が掲げてきた共通予算などユーロ改革構想も説得力をもたなくなる。

難民問題で求心力失ったメルケル独首相

 メルケル独首相が求心力を失ったのは寛大すぎる難民政策だった。難民100万人受け入れ構想は、ナチス時代の排外主義への反省や牧師の一家として旧東独で育ったという「メルケル流人道主義」が背景にあるかもしれない。それにしても、その「寛大さ」がドイツ国民、そしてEU内の反発を買ったのは事実である。

 2017年の総選挙の敗退後、政治混迷が長期化し、2018年には州議会選挙でも連敗した。18年間続いたキリスト教民主同盟(CDU)の党首の座を明け渡すしかなかった。12月の党首選では、メルケル派のクランプカレンバウアー氏が反メルケル派のメルツ氏を僅差で破ったが、党首・首相職の「総総分離」のまま2021年までメルケル首相がその座をまっとうできるか疑問視されている。

 ドイツもまた中道政治の低迷が目立つ。極右の「ドイツのための選択肢」が台頭し、環境政党「緑の党」が地盤を拡大する一方で、メルケル連立与党のキリスト教民主同盟(CDU)・キリスト教社会同盟(CSU)と社会民主党(SPD)はそろって退潮である。

 「メルクロン」とも「MM路線」ともいわれるメルケル・マクロン二人三脚が共倒れになれば、EU運営には大きな支障が生じることになる。

イタリア・ポピュリスト政権の揺さぶり

 こうしたEU運営の危機を見透かすように、イタリアの左右ポピュリスト連立政権はEUに揺さぶりをかけている。ポリュリスト連合の成立は、これまで政権を担ってきた。