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フランスでは、各地で大規模なデモが起こった(写真:ロイター/アフロ)

 2018年は、「中の時代」が終わった年として歴史に刻まれるかもしれない。「中道政治」の期待の星だったマクロン仏大統領は正攻法すぎる改革が国民の反発を買い、失速。寛大すぎる難民対策で、欧州連合(EU)の盟主、メルケル独首相も求心力を失った。

 イタリアに生まれた左右のポピュリスト(大衆迎合主義者)連立政権がEUを揺さぶる。トランプ米政権が右傾化を強めるなかで、米国の中間選挙では左右両翼の台頭が目立った。民主主義の本流だった「中道政治」の衰退は、資本主義を担ってきた「中間層」の没落を反映している。所得格差の拡大がその最大の要因だ。「中の時代」の終わりは、民主主義と資本主義の連鎖危機を招いている。

正攻法の改革で失速したマクロン

 フランスでは「新たな中道政治」の担い手として若きマクロン大統領に期待が集まった。右でも左でもない。そして共和党、社会党という既成政党でもない。極右・国民戦線のルペン党首を封じ込めるためにすべての勢力を結集して登場した。過去のしがらみがないため、サルコジ、オランドと歴代政権が手をつけられなかった改革を断行できる可能性を秘めていた。それはEU内で独仏主導といわれながら、ドイツに比べて大幅に出遅れたフランスを再興させる絶好の機会だった。

 2017年5月の政権発足早々、痛みを伴う改革に着手したのも時宜を得ていた。改革が遅れれば、次の大統領選を前にまた改革は頓挫する恐れがあったからだ。改革で意識したのは先行するドイツだった。シュレーダー政権が実現した労働市場改革に、マクロン政権も手をつけた。法人税率も引き下げた。外資誘致や企業の競争力向上をめざすためだ。合わせて財政改革、公務員削減などに乗り出した。改革自体は間違った選択ではなかった。

デモ攻勢で膨らむ財政赤字

 しかし、権利意識の強いフランス国民には、マクロン改革は労働者にしわ寄せするだけだと映った。たしかに、改革でも雇用情勢は改善せず、25歳以下の若者の失業率はリーマン・ショック後ずっと20%台を続けている。

 反政権デモがエスカレートしたのは、地球温暖化防止のための燃料税引き上げがきっかけだが、左右の勢力を問わず国民全体にマクロン政権に対する不満が鬱積していたといえる。

 「黄色いベスト」を着た反政権デモに抗しきれず、マクロン大統領はテレビ演説し、燃料税引き上げの1年凍結、最低賃金引き上げなどを表明せざるをえなかった。支持率は大統領就任時の60%台から20%台に急落している。その表情は冴えず、いつもの威勢の良さはみじんもなかった。