12月22日、米ホワイトハウスの大統領執務室で税制改革法案に署名、文書を掲げるドナルド・トランプ米大統領(写真:AP/アフロ)

 トランプ米政権の抜本的税制改革が実現した。法人税率の大幅引き下げや個人所得税の最高税率引き下げなど大型減税が主体で、大企業や富裕層優遇という批判が強まっている。レーガン税制改革以来30年ぶりの抜本改革だが、共和、民主両党が協力したレーガン改革と違って両党の亀裂は根深く、中間選挙への影響は必至である。「米国の分裂」が深刻化する恐れがある。大型減税が景気を刺激するのはたしかだが、景気過熱、バブル化の懸念もある。財政赤字拡大を背景に金利上昇や意図せざるドル高に波及し、世界経済を混乱させる恐れもある。

「世界戦略」と「米国第一主義」の差

 トランプ大統領は何かにつけてレーガン大統領を目標にしているようだが、税制改革でもレーガン改革とは大きな差がある。筆者は日本経済新聞のニューヨーク支局長としてレーガン政権の経済政策を取材した。「レーガノミクス」には行き過ぎた新自由主義や財政赤字拡大など批判がつきまとうが、そこには少なくとも理念と戦略があった。そして、対立をあおるのではなく合意を求める政治があった。

 レーガン時代はソ連との冷戦末期にあたる。レーガン政権には冷戦終結に向けて「強い米国」をめざすという明確な戦略があった。経済戦略もそれに沿って組み立てられていた。1985年9月のプラザ合意は、ドル高を是正しながら、協調利下げを導き、国防費カットなど財政赤字の削減につなげる戦略だった。そして、1986年の税制改革では米国経済の活力をよみがえらせることをめざしていた。法人税率は下げる一方で租税特別措置の縮小など課税ベースは拡大した。所得税は引き下げより簡素化に力点が置かれた。全体として、財政赤字拡大を避けるために「税収中立」が貫かれていた。そこに、レーガン税制改革の工夫がみられ、当時の税制改革としては「先駆的」と位置付けられていた。

ロナルド・レーガン第40代米大統領(大統領在任期間:1981年~1989年)(写真:americanspirit/123RF)

 これに対して、トランプ税制改革はほぼ減税一辺倒といっていい。連邦法人税率は35%から一挙に21%に引き下げる。地方と合わせた法人税率は28%程度になり、日独仏を下回ることになる。個人所得税の最高税率も39.6%から37%に引き下げる。企業の海外子会社からの配当課税も廃止する。これらによって、10年間で1.5兆ドル(約170兆円)という「史上最大」の減税が実現することになる。