EU離脱通告は国民投票だけでなく、英議会の承認が必要だと英高裁が判断し、その最終判断が最高裁から来年1月に下される。残留派が過半の英議会が国民投票のEU離脱をくつがえせば、総選挙で改めて争われる可能性もある。メイ首相は来年3月に離脱をEUに通告する方針だが、通告が遅れる恐れもある。

 EU離脱交渉は難航必至である。内務相の経験からメイ首相は移民の流入抑制を優先したい意向だが、それではEUへの自由な市場アクセスや金融パスポートの取得はむずかしくなる。メルケル独首相でさえ「いいとこ取りは許さない」と警告している。

 離脱交渉のカギを握るのは、英国に進出している日米など外資である。外資はEU市場全体をにらんで英国に進出している。EU離脱でこのネットワークが分断されるなら、外資は欧州大陸などに拠点を移さざるをえなくなる。金融センターであるロンドン・シティーの地位も盤石ではなくなるだろう。

排外主義者を大統領にする超大国

 英国のEU離脱決定以上に、世界に衝撃を与えたのは、超大国・米国であからさまな排外主義を掲げるトランプ氏が次期大統領に選ばれたことだ。トランプ氏は選出直後には発言を慎重にした気配があったが、排外主義の本質は変わらなかった。

 「米国第一主義」という名の保護主義が強行されることになれば、世界経済は危機に見舞われる。とりわけ現存する北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しは、照準を定められているメキシコ経済を直撃するだけでなく、日本企業を含めグローバル経済の生産ネットワークを分断することになる。それは、英国のEU離脱がEU市場に自由にアクセスできない「ハードBREXIT」になるのと同様である。

 日米を中心に練り上げられてきた環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱は、この地域の成長の果実を自ら放棄することになる。

 海外に工場を移転しようする企業を名指しで攻撃し、過重な課税を実行するなどということは、資本主義の先進国の首脳として、考えられない態度だといわざるをえない。

自由ゆえの危機

 それにしても、なぜ自由で民主的で豊かな英米で世界リスクを拡散する事態が発生したのか。やや皮肉だが、自由で民主的だからこその危機といえる。ナチスの登場も民主的なワイマール体制下で起きた。自由で豊かだからこそ、英米に移民は増え、そこにあつれきも生じることになる。フランスやベルギーという自由な欧州諸国がIS(イスラム国)のテロの温床になったのとも通じる。

 置いて行かれたと思い込む大衆の不満は、ツィッターなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)によって結合し、拡散した。ナチスは新しいメディアだったラジオを活用したが、現代社会ではSNSによる横のつながりは予想を超えて広がった。