歴史は繰り返すというが、歴史の大逆転は起きるだろうか。2016年は、民主主義、資本主義の最先進国で、覇権国家でもあった英国と米国が予期できないリスクを世界に拡散した年だった。英国の欧州連合(EU)離脱決定と米国のトランプ大統領の選出である。ポピュリズム(大衆迎合主義)を背景とした反グローバリズムが共通項である。英米発の世界リスクの連鎖をどう食い止めるかが2017年の大きな課題だろう。危機を救うのが第2次世界大戦を引き起こした日独だとしたら、歴史は75年で大逆転することになる。

英米発の世界リスクが広がる中で、リベラリズムの「最後の砦」として期待されるのがドイツのメルケル首相だ。来年秋に行われる連邦議会(下院)選挙に首相4期目を目指して出馬する考えを表明している。(写真:Sean Gallup/Getty Images)

第2次大戦後の大転換

 英国のEU離脱決定と米国のトランプ大統領選出を冷戦終結後、最大の転換とみる向きは多いが、歴史をさかのぼれば、これは第2次世界大戦後の大転換と位置付けられる。1930年代の大不況を受けて台頭したドイツのナチスと日本の軍部は、世界全体を第2次大戦に巻きこませた。それを収束したのは米英を中心とする連合軍だった。

 勝者である米英は戦後の国際秩序を築くことになる。国際連合や国際通貨基金(IMF)・世界銀行の体制である。とりわけ、英国に代わって圧倒的な覇権国家になった米国は、敗戦国である日独の経済再建を優先する。第1次大戦の戦後処理の失敗によりナチスの台頭を許した苦い教訓からだ。マーシャル・プラン(欧州復興計画)とドッジ・ラインのもと、敗戦国ドイツと日本は「奇跡の経済復興」を遂げることになる。

 その指導的国家である英米が戦後71年で、世界にリスクをまき散らす国になってしまったのである。この世界リスクは中国、ロシアという大国の存在感を高める危険がある。それは、主役なき世界をさらに混迷させるだろう。この世界規模の危機を救える立場にいるのは、第2次大戦の敗戦国、日独しかない。歴史は皮肉である。

グレート・ブリテンの分裂

 国民投票による英国のEU離脱決定は、世界に衝撃を与えたが、最も衝撃を受けたのは当の英国である。それは「グレート・ブリテン」の分裂を招いたからである。EU離脱か残留かの選択は世代間、所得階層間でその違いが鮮明だが、地域間の落差も大きい。スコットランドや北アイルランド、そして首都のロンドンは残留を支持している。英国がEUから離脱するなら、スコットランドは独立し、北アイルランドはアイルランドに統合し、ロンドンもシンガポールのように独立するという説もある。「グレート・ブリテン」は「リトル・イングランド」になるわけだ。

 もちろん、メイ首相は「グレート・ブリテン」としての結束固めに懸命だが、EUとの離脱交渉しだいで、英国分裂の恐れが強まりかねない。