「これは経済問題ではなく感情問題だ」とドイツの専門家は分析する。極右支持は旧東独地域の人々の疎外感が背景にあるという。高齢化に伴って、「昔は良かった」という感情はますます強まる可能性がある。難民受け入れに拒否反応が強い旧東欧圏に、そうした風潮が広がれば、EUは「東西亀裂」という難題を抱え込むことになる。

 もちろん、旧東欧圏にとってはEUメンバーであることの利点は極めて大きい。BREXITの難航ぶりを横目にみれば、EUに不満はあっても、「離脱ドミノ」はありえないだろう。

グローバル・ソフトパワーとして

 EUは14日の首脳会議で防衛協力のための「常設軍事協力枠組み」(PESCO)を発足させることを決めた。兵器の調達や開発、訓練、後方支援などで域内協力するためだ。もっとも、この防衛協力はEUが北大西洋条約機構(NATO)のような「ハードパワー」をめざすものではない。EUはグローバルな経済パワーであり、何より「グローバル・ソフトパワー」として存在感を高めるだろう。

 経済パワーとしては、第2の経済大国である中国との連携が大きな意味をもつ。アジアインフラ投資銀行にEU主要国がこぞって参加するとともに、中国の「一帯一路」構想では協力の一翼を担っている。自動車のEV(電動)化では、EUと中国の連携が先行している。

 日本との経済連携協定で合意したのは、トランプ米大統領の2国間主義、保護主義を打破して、メガFTA(自由貿易協定)の時代を築くという意義をもっている。

 重要なのは、グローバル・ソフトパワーとしての役割だ。地球温暖化防止のためのパリ協定の推進役を担っている。独禁政策の活用などによって、課税逃れなどグローバル資本主義の横暴に歯止めをかける。情報革命のなかで個人情報保護など先進的な監視役をつとめる。実物経済とマネー経済の落差が広がることが世界的な所得、資産格差につながるという認識から、資本主義の行方に警鐘を鳴らす役割も担っている。

「文明の融合」への挑戦

 2018年のEUが試されるのは「文明の融合」への挑戦だろう。「キリスト教共同体」として発展してきたEUだが、いまや域内にイスラム社会など多様な文明を抱えている。単にイスラム社会と共存するだけでなく、「文明の融合」をめざすことが課題だろう。もちろん、行き過ぎればかえって極右ポピュリズムの排他主義を刺激する。慎重さは必要だが、避けて通れない問題だ。欧州は歴史的にもイベリア半島を中心に「文明の融合」の実らせてきた経験がある。そこには異文化に対する畏敬の念があった。

 トランプ大統領があおる「文明の衝突」を防ぎ、「文明の融合」の実験場になれるとすれば、EUはそれこそ「平和の組織」として歴史に刻まれることになるだろう。



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