EUは復活の好機

 それは、域内にイスラム社会を抱え、移民、難民問題に苦闘しているEUに難題を持ち込む。中東の危機はEUの危機に直結する。マクロン仏大統領を先頭に、トランプ宣言に強く「抗議」したのはいうまでもない。

 皮肉なのは、このトランプ大統領の言動によって、自由で民主的、開放的なEUの存在が改めて浮上していることである。反トランプを鮮明にするEU首脳の発言は、正当性を高め、「国際世論」を形成する役割を果たしている。トランプ大統領はEUにとって「反面教師」になっている。ユーロ危機や難民危機など様々な危機にさらされてきたEUは2018年、復活の好機を迎えることになる。

ドイツは「大連立」復活へ

 なによりEUの盟主であるドイツのメルケル首相による「大連立」構想が復活する見通しになった。9月の総選挙でキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SDP)はともに大幅に議席を失い、大連立は崩壊した。しかし、大連立崩壊を受けたメルケル与党の同盟と自由民主党(FDP)、緑の党との「ジャマイカ連合」の協議は、環境問題や対EU政策の違いから破談に終わった。

 メルケル首相は、戦後初の少数与党か再選挙かという「負の選択」を迫られた。「鉄の女」サッチャー英首相を超え、コール独首相と並ぶ16年の首相在任をめざしたメルケル首相は窮地に追いやられていた。

 この窮地を救ったのは、マクロン仏大統領をはじめとするEUの首脳たちだった。社民党出身のシュタインマイヤー大統領のあっせんで始まったメルケル首相とシュルツ社民党首の話し合いは、「大連立」復活を要請するEU首脳たちの声を受けて大連立協議に発展した。欧州議会議長をつとめ極め付きの欧州主義者であるシュルツ党首は、ドイツの政治リスクはEUの危機だとするEU首脳たちの呼び掛けに応じるしかなかった。

 「政治巧者」であるメルケル首相は、最初からこうなることを読んでいたという見方もある。もちろん2大政党の間には、難民問題、税・社会保障問題、それにEU統合のあり方など食い違いはある。寛大な難民受け入れで反発を招いたメルケル首相は年20万人の上限設定が必要だとするが、社民党には寛容な姿勢を求める勢力が根強い。財政規律優先の同盟と「大きな政府」の社民党には差がある。シュルツ党首が求める「欧州合衆国」構想に同盟は慎重だ。連立協議は2018年春までかかる可能性があるが、最後はドイツ政治の老獪さが発揮されるとみられる。