年末年始の特別企画として、日経ビジネスオンラインの人気連載陣や記者に、それぞれの専門分野について2018年を予測してもらいました。はたして2018年はどんな年になるのでしょうか?
(「2018年を読む」記事一覧はこちらから)

欧州連合(EU)は2018年、復活の年を迎えるだろう。難民問題を背景にした極右ポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭など難題を抱えながらも、独仏主導によるEU再生が軌道に乗るとみられる。EU離脱交渉でもがく英国との落差は広がるはずだ。EUが浮上するのは、トランプ米大統領の自分本位主義が世界を混迷させているからでもある。エルサレムの首都宣言は世界に「文明の衝突」をあおる危険がある。そのなかで、EUは「グローバル・ソフトパワー」として、「文明の融合」を主導できるかどうかが試される。
「文明の衝突」あおるトランプ米大統領
登場以来、世界を揺さぶってきたトランプ米大統領は2018年も、混乱の火種をあちこちにまき散らす恐れがある。とくに、中間選挙を控えて、「米国第一主義」どころか「自分本位主義」に傾斜する危険がある。これまでに、地球温暖化防止のための国際的枠組みであるパリ協定から離脱したのをはじめ、自由貿易を進化させるとみられた環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱するなど、オバマ前大統領が主導した国際合意に相次いで背を向けてきた。
イランの核合意も批判し、中東に緊張を高めている。そのなかでも、イスラエルの首都をエルサレムと宣言し、大使館の移転を打ち出したのは、世界中のイスラム社会を震撼させた。親米のサウジアラビアをも困惑させた。中東和平はさらに遠のくばかりである。少なくとも、米国が和平の仲介役として信認されないことになる。中東における政治と宗教の微妙なバランスと歴史的背景を度外視したトランプ宣言は、世界中の批判にさらされた。
なにより、このトランプ宣言は「文明の衝突」をあおる恐れがある。それはイスラム社会の感情を刺激する。特定のイスラム教国家からの移民、難民に対する規制を打ち出してきたトランプ大統領だけに、「反イスラム」に向け本格始動したとみることもできる。
Powered by リゾーム?