トランプ流、負の連鎖の危険

 問題は、トランプ流のポピュリズム政策が世界中に負の連鎖を起こす危険があることだ。とりわけ英国の離脱決定で混迷するEUへの連鎖が懸念される。オーストリアの大統領選挙では、極右の候補が敗退したが、イタリアでは憲法改正をめぐる国民投票で、ユーロ懐疑派のポピュリズム政党である五つ星運動の進出を許した。レンツィ首相は辞任に追い込まれ、イタリア政治の混迷は避けられなくなっている。

 来年春のフランス大統領選挙では共和党フィヨン候補が最有力だが、トランプ当選で勢いづく極右、ルペン候補が決戦に残る可能性は濃厚だ。メルケル首相が4選をめざす来年秋の独総選挙でも右派勢力が台頭する危険がある。

 米欧間でのポピュリズムの負の連鎖は、世界経済の大きな不安定要因になる。そうでなくてもロシア、中国、トルコ、フィリピンなどに広がる強権政治は、大恐慌後の1930年代を連想させる。

安倍首相はトランプ氏に警告を

 ここで重要なのは、日本の役割である。トランプ流排外主義に物申すのは、同盟国である日本の責任だろう。真っ先にトランプ氏と会談した安倍晋三首相の責任は重い。

 TPPへの参加を繰り返すだけではすまない。米国が不参加なら、他のTPP11カ国ととともに、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)との結合をめざすことだ。そうして米国の翻意を待つしかない。同時にEUとの経済連携協定の締結を急ぐことだ。EUにとっても、保護主義の防波堤になるだけに、早期合意を導ける可能性がある。

 それだけではすまない。NAFTAの見直しに反対することだ。域外国だからといって遠慮する理由はない。日本企業の利害に直結しているからこそ、見直しに反対して当然だ。それによって、グローバル経済の相互依存がいかに深いか、排外主義の危険がいかに大きいかを説くべきだ。

 トランプ氏は排外主義の本質を簡単に変えるとは思えないが、だからこそ国際社会と連携して粘り強く説得するしかない。それが同盟国としての責任であり、国益である。