EU市民に慣れた若者と「昔は良かった」症候群に陥った高齢層との断層も広がるだろう。BREXITは、大学交流や職場確保などEUを前提に育ってきた若者の未来を奪うことになりかねない。BREXITは英国社会を分裂させる不毛の選択である。

EU離脱は欧州離脱と同義

 EUから離脱しても「欧州」には残るというのが英国内の大方の見方だろう。EUは単なる「国際機関」にすぎないから、離脱しても影響は小さいという見方さえある。

 しかし、EUは2度の世界大戦を経てできた「平和の組織」である。単なる経済同盟を超える存在である。EUとして結束しているからこそ、トランプ大統領の暴走や中国、ロシアなどの強権政治に対峙できる。

 EUは自由で民主的なグローバル・パワーとしての存在感を高めるはずだ。とりわけ、地球温暖化防止や個人情報保護など人権に即したルール・メーカーとしての役割が大きい。

 そのEUからの離脱は「欧州離脱」に等しい。欧州には北大西洋条約機構(NATO)があるが、それは米欧同盟である。米欧同盟に亀裂が深まるなかで、EU内にはマクロン仏大統領を中心に「欧州軍」創設の動きが強まっている。EUから離脱すれば、英国はここでも取り残されるだろう。

国民投票の再実施を

 メイ政権下でのEU離脱交渉を通じて、BREXITの矛盾が露呈した。メイ首相は2016年の国民投票の結果を尊重し、国民投票の再実施はないと繰り返しているが、BREXITをめぐる大混乱が続けば、それだけで、英国経済は打撃を受ける。ここはいったん立ち止まる勇気が求められる。EUも2019年3月末の離脱期限にこだわらず、英国の出方を見守る度量が必要だろう。

 最近のユーガブによる世論調査ではEU残留支持が46%と、離脱支持の40%を上回っている。国民投票の再実施を求める意見は過半を占め、反対を大きく上回っている。メイ政権はBREXITをめぐって窮地にあるが、政権の命運がどうあれ、英国民の声を問い直すことだ。BREXITを再考することこそ、成熟国家、英国の知恵であるはずだ。