自身が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と、自由民主党(FDP)、緑の党による連立交渉が決裂し、窮地に陥った独アンゲラ・メルケル首相。20日、ベルリン市内。(写真:AP/アフロ)

 ドイツの総選挙を受けた与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党(FDP)と緑の党による連立協議は決裂し、4選をめざすアンゲラ・メルケル首相は窮地に追い込まれた。社会民主党(SPD)を含め連立協議を再開するか、少数与党で政権を運営するか、再選挙を実施するか選択を迫られるが、欧州連合(EU)の盟主であるドイツの政治空白が長期化するのは避けられない。それはマクロン仏大統領と組んだ独仏連携による欧州統合に響くだろう。英国のEU離脱交渉にも影響は必至である。さらに、トランプ米大統領による「米国第一主義」で揺らぐ世界を一層、混迷させる恐れがある。

予想くつがえす決裂

 環境政策や難民問題、EUへの姿勢で食い違いが大きい3党の「ジャマイカ連立」(注)は当然、難航は予想された。しかし、多少時間はかかっても、妥協が成立するはずだというのが大方の見方だった。「政治巧者」のメルケル首相ならうまくやれるはずという見方が専門家の間では有力だった。「ジャマイカ連立のドイツはむしろ欧州にとっていいことだ」(ブリューゲルのガントラム・ウルフ所長)という見方もあったほどだ。EUの盟主であるドイツ「独り勝ち」ではなく、柔軟なドイツへの期待がそこにはあった。

(注)3党のシンボルカラー(黒、黄、緑)がジャマイカの国旗の色使いに似ていることから、ジャマイカ連立と呼ばれるようになった。

 ところが、現実はそうはいかなかった。環境政党の緑の党と経済界寄りの自民党の差はあまりに大きかった。石炭火力の廃止を求める緑の党に、企業の競争力低下を懸念する自民党は対立した。難民受け入れでも、難民家族の受け入れを主張する緑の党と、それに慎重な与党キリスト教民主・社会同盟と自民党のズレは大きかった。メルケル首相にすれば、寛大すぎる難民受け入れ方針が総選挙での事実上の「敗北」につながったという思いがあるだけに、受け入れを制限する方針は譲れなかった。