世界を見渡せば、日本と欧州連合(EU)との経済連携協定の大枠合意などメガFTAが動き始めている。なお細部の詰めは残されているが、TPP11の合意は進展への促進材料になる可能性もある。世界の新たな通商体制が米国抜きで動き出すのは、第2次大戦後初めてであり、ここでも「米国の時代」の終わりを暗示している。

通用せぬ「2国間主義」

 トランプ大統領は、アジア歴訪で自らの「2国間主義」がアジアでも通用しないことを痛感させられたに違いない。2国間の貿易不均衡是正という考え方は、経済学の常識に反している。サプライチェーンなど多角的な相互依存を前提にするグローバル時代にあって、「2国間主義」は不毛である。輸入は損失で輸出は利益という発想は、あまりに時代遅れだ。実務家ばかりで経済学者不在のトランプ政権の弱点がここにあらわれている。

 もちろん、トランプ大統領が「米国第一主義」や「2国間主義」という自説を簡単に引っ込めるはずはないが、少なくとも声高に叫ばなくなるとすれば、アジア歴訪のかくれた「成果」といえるかもしれない。

「2番打者・日本」に求められる「大結合」戦略

 トランプ大統領はアジア歴訪で、唯一の友人は安倍晋三首相だと実感しただろう。北朝鮮危機にあって、日米同盟を堅固にするのは当然の選択である。しかし、「友人」だからといって、トランプ大統領の過ちに目をつぶるのは間違いだ。世界は安倍首相の言動を注視している。「友人」だからこそ直言すべきことは多い。地球温暖化防止のためのパリ協定への復帰を働き掛けるべきだし、イラン核合意を守るよう直言すべきである。日本企業への影響も大きいNAFTA見直しに注文をつけてもいい。

 何よりアジア太平洋での「大結合」を主導することだ。通商では日本主導のTPP11と日中韓が加わるRCEPを結合し、米国の参加を誘導する。アジア太平洋全体に自由貿易圏を広げるにあたって、日本はその要の役を担う歴史的使命がある。

 国際金融では、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に米国とともに加盟することだ。そのうえで、AIIBとアジア開発銀行の統合をめざすのである。

 アジア太平洋を「日米VS中国」の対立の構図にするのは危険だし、現実的ではない。一方で、中国の海洋進出など膨張政策を黙認すべきでもない。アジア太平洋で米国と中国を結合する「2番打者・日本」の役割は大きい。