対北朝鮮で食い違いが大きかったのは、米中である。習近平国家主席は、北朝鮮を核保有国とは認めず、経済的な圧力を継続する方針だ。国連安保理決議による制裁の完全履行をめざしている。その一方で、トランプ大統領が求める「経済断交」には慎重で、あくまで対話による解決を求めた。制裁効果があらわれるのに、時間がかかるとみる習近平国家主席と「残された時間は少ない」と主張するトランプ大統領とのズレは大きい。

 北朝鮮との歴史的関係が深いロシアやASEAN諸国も含めると、北朝鮮包囲網には、かなりの温度差が残されている。

 もっとも、トランプ大統領のアジア歴訪中に北朝鮮が核・ミサイル開発について音無しの構えに転じたのは、国連安保理決議による経済制裁にそれなりの効果がみられる証拠ともいえる。石油禁輸など制裁強化に踏み込まれれば、国家の危機につながることを北朝鮮も肌で感じているはずである。

 中国が最も警戒するのは、北朝鮮の崩壊だろう。それは中朝国境での大量の難民危機につながる。朝鮮半島が韓国支配に傾斜し、西側に属することになれば、社会主義国である中国との緊張も高まる。そうならない前に、朝鮮半島の非核化を実現し北朝鮮の現状維持をはかるしかないと考えているのだろう。

 一方で、トランプ大統領のアジア歴訪にあたり、米軍は日本海に異例の空母3隻を展開する軍事演習を実施して、北朝鮮の核・ミサイル開発に対して強力な圧力をかけた。そこには、北朝鮮対応で食い違いが大きい中国へのメッセージも含まれているとみられる。

 北朝鮮危機をめぐる米中の溝は埋まらず、危機はなお続くことになる。危機打開のカギを握る中国を説き伏せられなかったトランプ流外交の限界を示している。

米抜きで動き出す「メガFTA時代」

 トランプ大統領のアジア歴訪で鮮明になったのは、停滞していた「メガFTA(自由貿易協定)時代」が米国抜きで動き出すという新しい現実だった。TPP11カ国は、離脱した米国抜きで、TPPを稼働させることで合意した。

 土壇場で、カナダのトルドー首相が異議を唱えたのは、トランプ大統領が要求する北米自由貿易協定(NAFTA)見直しがからんでいる。NAFTA再交渉で厳しい譲歩を迫られるカナダには、TPP交渉をしばらく継続した方がNAFTA再交渉もやりやすくなるという読みがあったようだ。

 歴史が皮肉なのは、TPPは民主党の鳩山政権による米国抜きの「東アジア共同体」構想に刺激されて動き出したという経緯があることだ。米国が小国連合だったTPPを乗っ取る形で立ち上げた。日本の参加は大幅に遅れている。その日本が米国離脱後のTPP継続を主導したのも皮肉である。

 一方で、もともと日本提案で動き出した東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は交渉が進展せず、年内合意は見送られた。中国、韓国を含むこの交渉は、先進的なTTP11の合意に刺激されて再稼働することが期待される。