米国の大統領選挙で予想をくつがえしてドナルド・トランプ氏が選出されたことは、世界に衝撃に与えた。英国の欧州連合(EU)離脱に連鎖して自国第一主義の潮流が広がっていることを裏付けた。差別発言を含むトランプ氏の排外主義が、そのまま実行に移されるなら世界を危険にさらすことになる。それは「米国の分裂」をさらに深刻化させ、米国の時代を終焉させることになりかねない。

次期米国大統領に決まったトランプ氏は9日、勝利宣言をして国民の団結を呼びかけた。しかし、ニューヨークほか全米各地で、「私たちの大統領ではない」「トランプ氏を認めない」といったプラカードを掲げた大規模な抗議デモが起きている。(写真:ロイター・アフロ)

英国のEU離脱と内向き連鎖

 トランプ氏の勝利は、英国のEU離脱決定に連鎖する動きである。英国のEU離脱派が掲げた「英国第一」に続いて、トランプ氏が強調した「米国第一」が受け入れられたことになる。「内向きの連鎖」が英米という主要先進国で起きたのは皮肉である。新自由主義の基本原理に基づいて、グローバリズムを率先して展開してきた英米が足元を揺さぶられて、その原理原則を放棄しているようにもみえる。

 共通しているのは、グローバル経済の恩恵を享受する一部の高所得層とその恩恵を受けられない低所得層との格差が拡大している点にある。その不満が排外主義の誘惑に飛びついたのである。エリート層への根深い不満をかきたてる大衆迎合主義(ポピュリズム)がそこにある。

 危険なのは、この「内向き連鎖」がさらに広がりかねないことだ。来年春のフランスの大統領選で反EUを掲げる極右、国民戦線のルペン党首がどこまで得票するか懸念される。「今日のトランプ」が「明日のルペン」になるとさえいわれる。来秋の独総選挙への影響も心配される。それしだいで、英国のEU離脱で揺らぐEUの今後に大きな影響を及ぼしかねない。台頭する欧州の極右勢力はこぞってトランプ勝利を歓迎し、この風潮に乗ろうとしている。