2018年11月7日、ワシントンで記者会見するドナルド・トランプ米大統領(写真:AP/アフロ)

 米国の中間選挙では、上院は共和党が多数を維持したものの、下院は民主党が8年ぶりに過半数を奪還した。予想された結果とはいえ、選挙の最前線に立ったトランプ大統領の事実上の敗北といえる。

 若者や女性の多くは、トランプ大統領にはっきりノーを突きつけた。たしかに「米国の分断」と「世界の分断」を招いた罪は重大だ。トランプ政権は、上下両院の「ねじれ議会」で政権運営がむずかしくなるが、問題はそこにあるのではない。「米国第一主義」を掲げての保護主義、移民排斥など排外主義、パリ協定離脱など反環境政策、そして核開発競争と世界を「新冷戦」の混乱に陥れた「トランプ暴走」に歯止めをかけられるか。それこそがいま問われている。

3度目のハラハラ

 米中間選挙は米国政治の玄人には関心事かもしれないが、世界中がかたずをのんで見守るほどのニュース価値はなかった。事実、前回の投票率は41%と低く、米国民の関心は薄かった。たいてい現政権には厳しめの結果になると相場が決まっていた。それが今回は投票率は47%に跳ね上がり、期日前投票も大幅に増えた。投票の列が予想を超えて伸び、投票時間が延長された州もあった。議会選挙や知事選なのに、トランプ大統領本人の是非を問う審判、「国民投票」の色彩が濃かったためだ。

 選挙結果について、トランプ大統領は「素晴らしい成功をおさめた」と自画自賛している。大統領そっくりの「ミニ・トランプ」と呼ばれる層が登場したのが気に入ったようだが、これは明らかにトランプ大統領の敗北である。共和党が上下両院を支配していた体制が、トランプ大統領のせいで崩れたのである。CNNは若者の3分の2は、トランプ大統領に反対し民主党を支持したと報じている。これらの若者こそ投票率向上の主役だった。急増した女性議員の大半は民主党からだった。

 この米中間選挙ほど、ハラハラさせられた選挙はなかった。2016年、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票、そして米大統領選挙で2度も「まさか」の結果に世界中が驚愕した。米中間選挙でトランプ政権が上下両院とも勝利するという「まさか」が起きれば、2020年の米大統領選につながることになるとトランプ大統領を勢いづかせていたかもしれない。まさに「3度目のハラハラ」だった。

世界を混乱に陥れた2年

 トランプ大統領の2年は「米国の分断」をもたらしただけではない。それは「世界の分断」を招き、あちこちで混乱を引き起こした。だからこそ、世界中がこの米中間選挙に着目したのである。

 まず「米国第一主義」を掲げた保護主義である。いきなりオバマ前大統領が主導した環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した。かと思うと、クリントン民主党政権下で成立した北米自由貿易協定(NAFTA)を見直し、米墨加(USMCA)協定に変更した。米国への投資、生産誘導をめざして、数量規制や為替条項を盛り込んだ。自由貿易協定が「管理貿易」協定になってしまった。

 鉄鋼、アルミニウムの関税引き上げで世界中を相手に貿易戦争を仕掛けたあとは、2国間交渉に持ち込み、2国間の貿易赤字解消をめざした。2国間の貿易赤字を「損失」ととらえるトランプ大統領は典型的な経済音痴である。なかでも米中の貿易戦争は世界経済を揺るがし始めている。ハイテクの覇権争いが根幹にあり、「経済冷戦」の様相が濃いだけに、米中間選挙の結果にかかわらず、エスカレートしかねない。

 移民排斥など排外主義は、「メキシコの壁」建設に表れている。そのメキシコを経由して米国をめざす中米から移民の列「キャラバン」には、メキシコとの国境に米軍を動員して排除する構えである。

 オバマ前大統領が先導した地球温暖化防止のためのパリ協定から離脱するとともに、票獲得のため石炭への規制を緩和した。今そこにある「地球の危機」に、あえて反環境政策を貫いている。冷戦終結と核軍縮を導いた歴史的な中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄すると表明して世界を核危機の脅威にさらした。オバマ前大統領が目指した「核兵器なき世界」に逆行する。同時にイランの核合意から離脱し、経済制裁を打ち出して、原油市場を動揺させている。