米連邦準備理事会(FRB)の次期議長にジェローム・パウエル理事が指名された。ジャネット・イエレン現議長が手掛けた超金融緩和からの出口戦略を担うことになる。かじ取りを誤れば、金融市場を揺るがせ、世界経済を混乱させかねないだけに、責任は重大である。パウエル次期議長は、アラン・グリーンスパン元議長とは共和党系、ウォール街出身など共通項が多い。マエストロ(巨匠)と呼ばれたグリーンスパン氏だが、30年前のブラックマンデー(ニューヨーク証券取引所を発端に起こった、世界的株価大暴落)に対処した経験から、株価重視の金融政策に傾斜し、リーマンショックの遠因をつくった苦い教訓がある。パウエル次期議長はその教訓を生かせるかどうかが試されている。

マエストロとの共通項

 トランプ米大統領に指名されたパウエル氏をみていて、30年前、レーガン大統領に指名されたグリーンスパン氏を思い出した。トランプ大統領が「経済成長のため何をすべきか理解している」と紹介したのに対して中央銀行家らしく「物価安定に全力をつくす」と述べたが、緊張のためかどこかおどおどしていた。鼻眼鏡で謙虚そうにみえるのも似ている。経済専門家ではないが、投資ファンド「カーライル」の共同経営者を務めるなどウォール街出身で、共和党系である点、それに薄給のFRB議長を続けられる資産家であることも共通項だ。

トランプ米大統領によって11月2日、FRBの次期議長に指名された、ジェローム・パウエル FRB理事。(写真:Bloomberg/Getty Images)

 FRB議長として1987年から2006年までほぼ19年間つとめ「マエストロ」の名をほしいままにしたグリーンスパン氏だったが、就任当初は「カリスマ」には程遠かった。インフレ退治に辣腕を振るった前任のポール・ボルカー氏に比べるといかにも地味に見えた。

 ウォール街のエコノミスト時代、日本経済新聞のニューヨーク支局長としてたびたび会ったが、気さくな人柄でFRB議長になるとは思いもしなかった。野球少年でクラリネット奏者でもあったグリーンスパン氏には野球と音楽が趣味の筆者は妙に共感を覚えたが、インタビュー記事は内容がまともすぎて面白みに欠け、決して大きな扱いにはならなかった。予言者、ヘンリー・カウフマン氏のインタビューが1面に載せられたのとは大違いだった。