マクロン仏大統領との落差

 EU首脳会議で、メイ首相と対照的だったのは、若きマクロン仏大統領の威勢の良さだった。EU首脳会議後の記者会見はせいぜい30分で切り上げるのがふつうだが、マクロン大統領は得意分野の「デジタル欧州」を中心に1時間も滔々と語り続けた。肩パッドの入ったような紺の背広で小柄な体を大きく見せるのは、ナポレオンに習っているようだし、わかりやすい語り口はドゴールに学んでいるともいわれる。

 EUのリーダーとして期待されるマクロン大統領だが、最も強く意識しているのは仏独連携である。1時間の記者会見でユーロ予算やユーロ財務省の創設など財政統合によるユーロ改革は封印した。メルケル独首相がFDP(自由民主党)と緑の党の「ジャマイカ連合」の形成に苦労しているときだから、FDPが嫌がる財政統合にはあえて触れなかったのだろう。BREXIT後のEU再生も盟主であるメルケル首相抜きでは進まないことをマクロン大統領はよくわかっている。

英離れでポンド危機の恐れ

 「BREXITはEUより英国経済に大きな打撃を及ぼすことになる」。ブリュッセルのシンクタンクであるブリューゲルのガントラム・ウルフ所長はこう警告する。「英ポンドはすでにユーロに対して15%下落しているが、さらに下落は避けられない」とウルフ氏は分析する。

 ドイツ銀行のチーフ・エコノミスト、ステファン・シュナイダー氏は「ステータス・クオ(もとからある状態)を崩すことによる英国経済へのリスクは大きい」とみる。

 BREXITでロンドンから欧州大陸へ主要金融機関の移転の動きが強まっている。米ゴールドマン・サックス・グループのロイド・ブランクファイン最高経営責任者(CEO)は「良い出会いがあり、天気も良い。フランクフルトで過ごす時間が増えるのでよかった」と述べ、フランクフルトへの移転に意欲をみせた。日本の金融機関のフランクフルト詣でも活発で、宿泊したホテルでは首脳の顔もみかけた。

 「フランクフルトは退屈な街だという見方もあるが、パリでは英語が通じる確率は半々だ」とシュナイダー氏は語る。どちらにしろ、金融機関の欧州大陸シフトは鮮明だ。

 英国経済はEU依存、外資依存で成り立ってきた。外資流出の連鎖が広がれば、ポンド安を通り越してポンド危機に陥る危険がある。そうなれば、スタグフレーション(景気後退と物価高の同時進行)は避けられず、第2次大戦後の「英国病」が再発することになりかねない。

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