中国の7-9月期の経済成長率は6.5%に減速した。生産と投資の伸び悩みは大きい。経営破たんの増加など貿易戦争の影響は表面化している。米国製の自動車だけでなく、中国が制裁関税を課した化学品や紙製品などで値上げが相次ぎ、9月の消費者物価は2.5%上昇した。中国企業が抱えた過剰債務はますます大きな足かせになってきた。こうしたなかで、上海株式市場の動揺は著しく、世界同時株安を加速させている。

 そんな中国にとって、日本との協調はトランプ米政権へのけん制の狙いが込められているが、日本にとっても日中協調はトランプ政権への「中国カード」ともいえる。米国よりずっと貿易関係の深い中国との協力を強化することで、対日圧力を強めるトランプ政権をけん制する思惑がある。

 来年始まる日米の物品貿易協定(TAG)をめぐる交渉では、米側は自動車関税の引き上げをちらつかせながら自動車輸入の「管理貿易」化をめざす可能性がある。さらにムニューシン財務長官は「為替条項」を要求する構えで、日米交渉は難航必至の情勢である。トランプ政権との関係を大きく崩さない範囲で「中国カード」を交渉の武器にしたいというのが安倍政権の本音だろう。

失敗した「中国包囲網」構想

 日中が歩み寄った意味は大きいが、中国が米国と肩を並べようとするなかで、日中に不仲の時代が長く続いたツケは重い。安倍政権がめざした「地球儀を俯瞰する外交」は事実上の「中国包囲網」構想だった。しかしこの構想は失敗に終わった。

 安倍政権は中国をアジアにおけるライバルと位置付けていたが、あっという間に「日中逆転」が進行していたのである。2010年に国内総生産(GDP)に抜かれ、中国に世界第2の経済大国の座を明け渡したと思えば、いまやその落差は2.5倍にも達した。

 中国は経済を先導する世界的起業家を輩出してきたが、日本にはほとんど見当たらない。自由な資本主義国である日本より国家資本主義の中国の方が、起業家精神が旺盛とは大きな皮肉である。日本が圧倒的にリードしていたはずのハイテク分野でも、日本は逆に差をつけられた。フィンテックでは中国視察団への日本企業の参加が人気を集めるありさまだ。

 習近平政権がめざす「中国製造2025」に、トランプ政権が警戒しているのは、中国が国家資本主義により、半導体製造などで米国追跡をめざしていると考えるからだ。ハイテク分野での米中間の覇権争いはし烈を極める。中国が照準を定めるのは米国であり、もはや日本ではない。

 人民元の「国際通貨」化構想も、「ドル・ユーロ・人民元」の3大通貨を軸にしている。日本円はほとんど眼中にないといっていい。

 そんな経済超大国になった中国に対して「包囲網」を築こうという発想そのものが時代錯誤だったといえる。「地球儀を俯瞰」して中国の周辺に足しげく外交を展開して、肝心の中国との直接対話を疎かにしてきたのではないか。この戦略そのものに大きな誤りがあった。その反省がないかぎり、日中は再び不幸な「不仲時代」に逆戻りしかねない。

 日中はなぜ独仏に学べなかったか

 中国駐在の経験はないが、駆け出し記者のころ日中国交回復前の日中貿易を担当して以来、ずっと中国を側面からみつめてきた。欧州駐在の経験を踏まえると、戦後72年になるのに、日中はなぜ独仏に学べないのかという命題に突き当たる。