中国の李克強首相(左)と安倍晋三首相

 安倍晋三首相と中国の習近平国家主席による日中首脳会談は、経済協力を最優先し連携することで合意した。トランプ米大統領が「経済冷戦」から「新冷戦」に踏み込むなかで、追い込まれての日中連携である。米中経済戦争で日本に期待せざるをえない中国と日米摩擦を前に中国の経済力を頼みとしたい日本の経済的利害が一致した。

 しかし、日中平和友好条約締結から40年、新時代を迎えた割に日中の合意は小粒である。目先の防御的連携を超えて、環太平洋経済連携協定(TPP)と東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の結合などアジア太平洋の大戦略を打ち出し、米国をこの成長センターに引き戻すときである。

経済最優先の連携

 日中首脳会談では、新時代の関係構築で合意した。安倍首相は①競争から協調へ②互いにパートナーとして脅威にならない③自由で公正な貿易体制の発展―という3原則を提起した。

 歴史認識のズレや尖閣諸島をめぐる対立など、これまでの日中のあつれきにはあえて深入りを避け、経済協力を最優先したのが特徴だ。第3国市場での連携は、中国が進める「一帯一路」構想を視野に入れたものだ。この構想をめぐっては、アジア各国から債務拡大などの不安が強まり、大きな壁に突き当たっているだけに、日本の協力は「中国第一主義」への懸念を払しょくするのが狙いだろう。

 金融協力にも一定の進展はあった。危機時に日銀と中国人民銀行は円と人民元を交換するスワップ協定を再開する。融通額の上限は3兆4千億円(人民元の上限は2千億元)と10倍超になる。尖閣諸島をめぐるあつれきによって2013年に失効した通貨協定の復活で、日本企業が中国でビジネスを展開しやすくなることはたしかだ。

遅すぎた対中ODAの終了

 その一方で、日本が40年に渡り実施してきた中国に対する政府開発援助(ODA)は2018年度の新規案件を最後に打ち切ることになった。1990年代、筆者は日本の対中円借款の実施調査のため西安郊外のダム建設や北京郊外の浄水場などを訪問したことがある。驚いたのは円借款に関わる中国人の多さだった。

 日本の円借款は空港建設など中国のインフラ整備に大きな貢献があった。固定資本投資に日本からの円借款は組み込まれていた。中国の改革開放路線を側面から支援したのは明らかだ。その割には中国からの感謝はそう大きくなかったようにみえる。戦後賠償を放棄する見返りとされた円借款だけに、当然視されていた面があったかもしれない。日本も他の先進国の支援に比べても、円借款の効果を積極的にはPRしてこなかったところがある。どちらにしろ、とっくに援助する側の先頭にある中国が援助される国を卒業するのは当然であり、対中ODAの終了は遅すぎたといえる。

トランプ攻勢に守りの協調

 日中があつれきを超えて協調したのは、トランプ大統領が経済冷戦から新冷戦に踏み込もうとするなかで、「守りの協調」に動かざるをえないという事情がある。とくに中国は、米中貿易戦争で大きな打撃を受けているだけに、日本との協調は欠かせない。