しかし、INF廃棄条約の破棄をめぐるトランプ大統領の方針で、米朝首脳会談の歴史的意義は大きく減殺されることになった。それどころか「新冷戦」のなかでの次回の米朝首脳会談は、肝心の朝鮮半島の非核化が揺らぐ危険もある。いまや北朝鮮の後ろ盾であることが鮮明になった中ロが、態度を硬化させる恐れもあるからだ。

唯一の被爆国、日本の責任

 核軍拡競争が再燃し「新冷戦」の時代が到来すれば、世界は核による大きなリスクにさらされる。世界経済にも影響は避けられなくなる。こうしたなかで、唯一の被爆国である日本の役割は決定的に重要である。

 米国の「核の傘」のもとにあるという配慮から、日本が核兵器禁止条約に加盟しないのは大きな問題だ。日米同盟は重要だが、唯一の被爆国としての「地球責任」はずっと重い。核兵器禁止条約にNATO諸国が参加しないことが日本の不参加の理由にはならない。日本はまずこの核兵器禁止条約に加盟することだ。それをてこに、外交の軸を立て直すべきである。

 そのうえで、米ロ中に核軍縮を徹底するよう求める必要がある。米朝首脳会談を朝鮮半島の非核化にとどめず、「核兵器なき世界」につなげるうえで、日本の外交力が試される。この欄で再三、問題提起しているが、2019年に大阪で開く20カ国・地域(G20)の首脳会議の機会に、首脳たちの広島訪問を計画することだ。トランプ大統領もプーチン大統領も習近平国家主席も、世界の指導者として核兵器の悲惨さを知るべきだ。唯一の被爆国の指導者として、安倍晋三首相の地球的責任は、これまで以上に重い。

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