カタルーニャ州はスペイン第2の都市、バルセロナを中心に産業、観光の先進地域である。スペインのGDP(国内総生産)の2割を占める。かりに独立することになれば、それこそ、シンガポールが独立したマレーシア、ロンドンが独立した英国、東京が独立した日本ということになる。ユーロ危機からようやく立ち直ったばかりのスペイン経済は致命的な打撃を受けることになる。そうでなくても独立運動の高まりだけで、有力企業は本社の州外移転計画を相次いで打ち出している。

 経済、産業だけでなく、カタルーニャは文化の集積地である。建築家のアントニ・ガウディ、画家のジョアン・ミロやサルバドール・ダリを生んだ。パブロ・ピカソら世界的天才も集まってきた。吸引力は絶大だ。そのカタルーニャ文化を最も特徴的に表しているのが、音楽の世界である。

アントニ・ガウディが作った公園から一望したバルセロナの街。(写真:PIXTA)
アントニ・ガウディが作った公園から一望したバルセロナの街。(写真:PIXTA)

カザルス──バッハと民謡の間

 パブロ・カザルスは20世紀最高のチェリストといわれる。カタルーニャが生んだ最高の芸術家のひとりといえる。カザルスの偉大さはチェロの現代奏法を確立したからだけではない。音楽の精髄であるバッハをよみがえらせた一方で、カタルーニャ民謡「鳥の歌」で世界を感動させた。一見、両極にあるようにみえる音楽がカザルスのチェロを通せば一体化しているのである。

 やっと大人用のチェロを手にしたばかりの13歳の少年、カザルスはバルセロナの港町にある古い楽器店で色あせた一束の楽譜を発見する。ヨハン・セバスチャン・バッハの「無伴奏チェロ組曲」である。そのときの驚きをカザルスは自伝で「なんという魔術と神秘がこの表題に秘められているか」と述べている。その存在すら知られていなかったこの曲を12年かけて研究し、25歳で初めて6つの全組曲を演奏する。「この作品はバッハの精髄であり、バッハこそ音楽の精髄である」と言い切っている。

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