ブラジル大統領選では、極右の社会自由党の候補、ジャイル・ボルソナロ下院議員が首位に立った(写真:AFP/アフロ)

 トランプ主義が暴走するなかで、世界に極右ポピュリズム(大衆迎合主義)が広がっている。ブラジル大統領選では「ブラジルのトランプ」と呼ばれる極右のジャイル・ボルソナロ下院議員が首位に立った。イタリアの極右、サルビニ副首相(同盟党首)が打ち出した財政拡大路線は財政規律を求める欧州連合(EU)への挑戦状ともいえる。旧東欧圏でも排外主義勢力が頭をもたげている。トランプ流排外主義に連鎖する極右ポピュリズムの蔓延は、グローバル経済を揺るがし、世界を危機に陥れる危険がある。

「ブラジルのトランプ」首位に

 ブラジル大統領選では、極右のボルソナロ氏が46%の票を獲得し首位に立ったが、過半数を確保できなかったため28日に左派のフェルナンド・アダジ元サンパウロ市長との決選投票が実施される。予想を上回る得票だったが、ボルソナロ氏は選挙結果に不満らしく「選挙に不正がなければ、今回で決まりだった」と述べた。根拠もなく不正というあたり、「ブラジルのトランプ」らしい。

 元軍人のボルソナロ氏は、軍事独裁政権を礼賛しているほか、黒人や同性愛者を差別する過激な言動が売りだが、それだけに反発も強い。それでも大統領選で首位になることが、ブラジル社会の混迷ぶりを浮き彫りにしている。国営企業の民営化など構造改革路線は市場では支持されており、ボルソナロ人気で株価や通貨レアルは上昇に転じている。

 ブラジル経済は2014年ワールドカップ、2016年オリンピックと相次ぐメガ国際大会の開催を受けて、低空飛行を続けてきた。新興国は軒並み米連邦準備理事会(FRB)の利上げの余波を受けているが、ブラジルもその例外ではない。失業率は12%、財政赤字の国内総生産(GDP)比は8%と構造問題を抱えている。それだけに、極右ポピュリストの改革路線に期待も集まる。

 収監中のルラ元大統領などブラジル政界には腐敗と汚職が相次ぎ、政治不信が極まっている。こうしたなかでの強権政治家への期待は民主主義の脅威でもある。

「トランプの壁」が揺るがす中南米

 中南米にはもともと、社会に不満を抱えた人々を取り込むポピュリズムの潮流があった。その傾向がさらに強まる可能性がある。中南米はいま、トランプ米大統領によるメキシコ国境での壁建設にみられる排外主義で、移民排斥のうねりが高まっている。独裁と極度の経済難にあるベネズエラやニカラグアからの移民、難民は周辺国に流入するが、ペルー、コロンビアなどには難民排斥の動きが強まっている。トランプ大統領の国境管理に阻まれた中米の人々は、結局、メキシコでの定住を目指すことになるが、それにはメキシコ国民の不安も高まっている。