「強い欧州」へ統合深化めざす

 EU統合の旗振り役であるユンケル委員長がめざすのは、「強い欧州」への統合の深化である。現在19カ国が参加している単一通貨ユーロを「EU全体の単一通貨」と位置付け、全EU加盟国が参加することをめざしている。もちろん、加盟条件を満たすスウェーデンとデンマークが慎重姿勢を変えて参加に応じるかは不透明だ。まだ加盟条件に遠い旧東欧圏に参加を急がせるとユーロ危機の発端になったギリシャ危機の二の舞になりかねないとも指摘される。

 それでもユンケル委員長は財政統合を進めるため常任のユーロ財務相や欧州版国際通貨基金(IMF)の創設も提案するなど意欲的だ。

 さらに、統合深化のため、移動の自由を規定するシェンゲン協定にEU全加盟国が参加することもめざしている。拡大路線も打ち止めにしたわけではなく、バルカン諸国への拡大も視野に入れている。

「グローバル・ソフトパワー」として存在感

 「強い欧州」をめざすうえでカギを握るのは「グローバル・ソフトパワー」としてのEUの存在感である。なにより「法と正義」を貫く姿勢に信頼感がある。

 長期にわたるトルコとの加盟交渉が暗礁に乗り上げているのは、トルコのエルドアン政権が言論弾圧など強権国家の色彩を濃くしているからだ。EUとトルコには、難民問題の打開という難題が横たわるが、それでもトルコの強権化を強くけん制するところにEUの真骨頂がある。EU内でもポーランド、ハンガリーなど旧東欧圏にみられる強権化の動きに対し強く警告している。

 トランプ米大統領の三権分立を無視するかのような「司法介入」や中国、ロシアの強権化など大国の動向のなかで、EUは「グローバル・ソフトパワー」として浮上している。そこにあるのは地球環境問題や難民問題にみられる「欧州の精神」である。